菅義偉前首相は、10日発売の月刊誌「文芸春秋」2月号のインタビューで、自民党の派閥政治に異を唱えた上で、岸田文雄首相が現在も岸田派(所属43人)の会長を続けていることに、疑問を呈した。

無派閥の菅氏は、小泉純一郎元首相や、安倍晋三元首相が、首相在任中は派閥(清和会)を離れたことに触れ「岸田総理が派閥に居続けることが、国民にどう見えるかを意識する必要があります。派閥政治を引きずっているというメッセージになって、国民の見る目は厳しくなると思います」と述べ、岸田首相の現在の政権運営に辛口評価をした。

自身はかつて、自民党総裁選で2度、所属していた派閥とは違う候補者を応援し「派閥にいられなくなる経験」をしたと明かした。

1998年総裁選の際には、当時、力を持っていた野中広務氏に「『あいつだけは許さねえ。政務官にしてやらねえ』と言われた。私は『政務官なんてやりたいと思っていません』とやり合ったことを覚えています」などと、野中氏との生々しいやりとりがあったことも明かした。

その上で「私が総理大臣の時には、派閥の推薦は受けずに人事を決めました。昔は派閥の推薦枠に名前がなければ、閣僚になれないという時代がありましたけど」とした上で「岸田文雄総理はそんな昔に戻ったとまでは言いませんが、派閥とうまく付き合いながら人事を決めていると思います」と、岸田流人事への持論も述べた。

派閥の弊害に関して、特に自民党総裁選の時に「国民の負託を受けて当選してきた政治家が、理念や政策よりも派閥の意向を優先してしまうこと」と指摘。「総裁選で派閥の意向に反発すれば、閣僚や党役員のポストからはじくとか、従った議員と差をつけるとか、私はずっと疑問に思ってきました。派閥に入っていなくても、政策本位で、適材適所にポストに就けるのが大事でしょう」「派閥の領袖に従わなければならない、自分の意見を言えない状態にすべきではない」とも述べた。

菅氏は10日、訪問先のベトナムでも「脱派閥」に言及している。