徳川家康を祖とする徳川宗家で、徳川記念財団理事長の家広さん(57)が父・恒孝(つねなり)さん(82)から家督を継ぎ、19代となったことをお披露目する「継宗の儀」が29日、同家にゆかりのある東京都港区の増上寺で行われた。

家督交代は今年1月1日付。徳川家の当主が替わるのは60年ぶりで、祝儀として行われるのは、江戸時代の第11代将軍家斉から12代家慶の生前交代以来、実に185年ぶりだ。

非公開で行われた儀式には、親族や徳川家に縁のある自治体の首長など関係者400人強が出席。読経や継宗に伴うあいさつのほか、香を献上する「献香」など1時間にわたり儀式が行われた。式の後では「江戸消防記念会」による特別演舞も奉納された。

一連の儀式を終えて記者会見した家広さんは「無事に儀式を終えて、ほっとしております。父の姿を見て不覚にも涙ぐんだが、あらためて責任の重さに身の引き締まる思いです」と述べた。式では「現時点では公表できない」ものの、家督相続の証しとして代々、受け渡されてきた品を受け取った。

恒孝さんからは「悪いことをしてはいけない。なんであれ、頑張りなさい」と励まされたという。「(所有する)文化財には今でも重要な発見があり、父個人の名義になっているものがまだ数千点ある。父が守ってきたもののを、私が未来に引き継いでいかないといけない」と話した。

今後の徳川家について「月並みですが、恥ずかしくないような状態にしていくと同時に、私どもが政権をお預かりしていた江戸時代についてはまだまだ国内外でも誤解が多く、なるべくただしていきたい。これはご先祖さまに対する責任と感じています」と述べた。

徳川宗家は江戸時代、代々征夷大将軍を担った。15代将軍徳川慶喜が大政奉還を行った後、徳川家の分家「御三卿(ごさんきょう)」のひとつ、田安徳川家の家達(いえさと)が、16代の家督を継承した。家広さんの父恒孝さんが、17代家正から18代を継いだのは、1963年(昭38)だった。

家広さんと妻の英美さんの間には、子どもはいない。「この後、家をどうするかはこれからじっくり考えていきたい」と話した。

家広さんは慶大卒業後、米コロンビア大で政治学修士号を取得。翻訳家や政治評論家としても活動し、2019年参院選では静岡選挙区に立憲民主党から出馬し、落選している。【中山知子】

▼徳川宗家略系図 -は実子 =は養子 ※敬称略

<1>家康-<2>秀忠-<3>家光-<4>家綱=<5>綱吉=<6>家宣-<7>家継=<8>吉宗-<9>家重-<10>家治=<11>家斉-<12>家慶-<13>家定=<14>家茂=<15>慶喜=<16>家達-<17>家正=<18>恒孝-<19>家広