アマチュア強豪の小山怜央アマ(29)が13日、大阪市の関西将棋会館でプロ棋士編入試験5番勝負の第4局に臨み、後手の横山友紀四段(23)を133手で破り、対戦成績3勝1敗で合格した。4月1日付でプロ棋士の四段になる。小山アマは棋士養成機関「奨励会」を経ない初の合格者となり、岩手県初のプロ棋士が誕生する。

戦型は横山が得意とする四間飛車になった。小山アマは深い研究で中盤からリードを広げ、終盤には正確な指し回しで抜け出した。 終局後、小山アマは「1つ結果を出すことができてホッとしている」と話し、「いままで詰めて勉強していたので、そういう気持ちからは逃れることができるのかな」とプレッシャーから解き放たれることを喜んだ。

3勝1敗に成績に「第3局に負け、悪い流れだったが、なんとか踏みとどまることができた。私にしては上出来です」と振り返った。

5番勝負ではプロを相手に堂々の3勝1敗。昨年11月の第1局では、本年度、8割を超える高勝率を誇る強敵・徳田拳士四段(25)に166手の混戦を制して勝利。同12月の第2局は、徳田と同じ昨年4月デビューの岡部怜央四段(23)に111手で快勝した。2局ともプロで流行している形を指しており、人工知能(AI)の将棋ソフトによる研究の深さがうかがえた。

小山アマは岩手県釜石市出身で、横浜市在住の将棋インストラクター。岩手県立大在学中の14年に学生名人、翌年アマ名人に輝いた。卒業後、強豪のリコー将棋部にも在籍したことがある。昨年9月13日のプロ公式戦に勝利し、直近の成績が規定の10勝5敗となり、受験資格を獲得した。

これまでアマチュアからプロに編入した棋士は、花村元司九段(故人)、瀬川晶司六段(52)、今泉健司五段(49)、折田翔吾五段(33)の4人。現行制度での合格者は15年の今泉、20年の折田に続き、3人目の合格者となった。

◆小山怜央(こやま・れお)

★誕生 1993年(平5)7月2日、岩手県釜石市生まれ。両親と弟の4人家族。

★出会い 子供の頃から物事にのめり込む性格。小学2年のときにはゲームに熱中し、めまいを起こして入院。退院後、母がゲームをやりすぎないようにと始めたのが将棋だった。毎週のように釜石市内の将棋教室に通い、すぐに大人と同じレベルの強さに。

★トップアマ 地元の釜石高を卒業するまで数々の大会で活躍。岩手県立大在学中の14年に学生名人、翌年アマ名人に輝いた。卒業後、強豪のリコー将棋部にも在籍したことがある。

★背水の陣 21年4月、「将棋を強くなりたい」との一心で勤めていた一般企業を退職。

★好きな駒 角。得意戦法は角換わり。

 

◆棋士編入試験 2014年(平26)4月に制度化。19年、今の名称に。アマチュア強豪か女流棋士で、プロの公式棋戦で最もいいところから見て10勝以上、かつその間の勝率6割5分以上の成績を収めた者が受験資格を得る。直近プロになった棋士5人が試験官を務め、3勝で合格。3敗で不合格。受験料は50万円。