東京・神宮外苑再開発計画をめぐり、地域住民ら61人が2月28日、事業者に工事の施工を認可した東京都に認可の取り消しを求め、東京地裁に提訴した。執行停止を求める申し立ても行った。

訴状では、今回の計画に本来適用が不合理で、意思決定過程に市民参加や情報公開が保障されない都の「公園まちづくり制度」を適用したことは「制度の濫用」と指摘。また、事業者側が、伐採する樹木の数について低木を含めずに申請するなど、十分な情報開示をしないまま、都の審議会に環境影響評価(アセスメント)書を提出したとも主張した。

今回明らかになった再開発全体の樹木の伐採数は、3000本以上になるとも指摘。都による認可の前提となる事実に誤認があり、裁量の逸脱があるため、認可は取り消されるべきとしている。

代理人弁護士は会見で「都の公園まちづくり制度を悪用した計画。制度の本来の趣旨に反しており許されるものではない。密室で計画を進め、外苑の緑の環境がつぶれてしまうような計画にゴーサインを出した都に問題がある」と、指摘した。

また原告代表で、これまでに11・7万人の反対署名を集めた実業家のロシェル・カップさんは「神宮外苑は東京の宝石の1つ。多くの市民が声をあげたが、都と事業者は急いで実施しようとした。本当にこういうやり方でいいのか。これが民主主義なのか。1度立ち止まり、公共資産の神宮外苑をどうするか考えるべきだ」と訴えた。

東京都は2月17日に事業者による施工を認可し、告示。事業者による工事着工が可能となった。小池百合子知事は同日の会見で「認可は法令にのっとって適切に行った」と述べていた。

再開発計画では今後、神宮球場や秩父宮ラグビー場を解体。現在の秩父宮ラグビーがある敷地に、ホテルなどを併設した野球場を建設。ラグビー場は現在の神宮第二球場を解体した跡地に新たに建設される。商業施設が入る高層ビル2棟が建設され、完成は2036年の見込み。

一方、現計画では多くの樹木が伐採され、名物のイチョウ並木の根の生育にも悪影響が出るとの懸念が根強い。今年1月20日に事業者側が作成した環境影響評価の評価書を告示した都に対しては、国連教育科学文化機関(ユネスコ)諮問機関「イコモス」の日本国内委員会が、審議会で再審議を行うよう求めている。【中山知子】