林芳正外相が、1日にインドで開幕した20カ国・地域(G20)外相会合を、同日に始まった参院予算委員会での審議を優先して欠席した問題が、2日の同委員会で取り上げられた。

日本維新の会の音喜多駿参院議員は、1日に林氏が参院予算委で答弁した回数は1回で、時間はわずか53秒だったことに触れ、重要な外交活動より国会日程を優先する決定をした政府の判断を批判。「林大臣のむだ遣いだったと言わざるを得ない。日本は今年のG7議長国にもかかわらず、国内の日程を優先して欠席することが国際社会にどう受け止められるか。国会運営に忖度(そんたく)して政府と与党だけで欠席を決めるのではなく、出席する方向で国会と協議すべきだったのではないか」と指摘した。

岸田首相は「出席する可能性を追求したが、総合的に勘案し最終的に政府と外務省として副大臣の派遣が適切とする判断をした。主張すべきは主張し、我が国の立場をしっかり発信したい」と述べ、当事者の林氏は「国際会議への出席は、会議や国会を含む国内日程を踏まえ総合的に判断している。国会対応も外交活動も、ともに大事。国会の理解を得つつ外交活動を展開していきたい」と述べた。

音喜多氏は「重要な公務と国会日程が重なった場合には、副大臣に国会で答弁させることが国会審議活性化法の理念だったはず。今回、自民党も国会優先として大臣を国会に縛り付ける意向を示したと聞く。少なくとも我々は、国益となる外交活動を全力で支援したい」と主張。首相は「国際会議への国務大臣の出席は、会議や国会を含む国内での公務日程内容を勘案し、総合的に判断してきている。国会も外交もともに重要。こうした点を国会の理解を得つつ、積極的な外交を展開したい」と応じた。

日本の外相がG20外相会合を欠席するのは初めて。今回の会合の日程をめぐっては、自民党の佐藤正久元外務副大臣が2日までに自身のツイッターで、中国が5日から始まる全国人民代表大会(全人代=国会)などの国内の重要日程と重ならないように調整を求めていたとの見方を示した。

「外交重視」とみられた岸田政権で起きた今回のお粗末な対応の影響か、林氏は、3日にインドで開かれる日本、米国、オーストラリア、インド4カ国による「クアッド」外相会合には出席する見通し。