甲斐犬や柴犬計10匹を劣悪な環境で飼育し、虐待をしたとして、警視庁保安課は29日までに、動物愛護法違反の疑いで、東京都八王子市の元ブリーダー尾川隆容疑者(46)を逮捕した。

逮捕容疑は、22年12月~23年1月、愛護動物である犬を虐待している恐れがあるとして、東京都から改善命令を受けるも、必要な措置を講じず、犬10匹を劣悪な環境で衰弱させた疑い。

都の環境保健衛生課によると、尾川容疑者は20年4月からブリーダーとして営業していた。近隣住民から「適切に飼育していないのではないか」と苦情が入り、都は飼育環境の指導、監視を行っていた。数匹を同じケージ内で飼っていたり、十分にエサが与えられていない状態だったという。「多頭飼育崩壊」が起きており、22年8月末には最大170匹を超える犬が飼われていた。都は、改善を求める勧告や命令を出してたが、尾川容疑者が応じなかったため、1月に警視庁へ刑事告発をしていた。

尾川容疑者のもとから保護された犬は、都や八王子市、愛護団体の協力で、譲渡が進められている。東京都杉並区の「ハナ動物病院」は、愛護団体からの依頼を受け、推定4~5歳で雌の甲斐犬の桃ちゃんと楓ちゃんの2匹を預かった。病院では血液検査や避妊手術などを行い、譲渡先を探し始めた。甲斐犬の成犬は体重15キロ~20キロになるというが、3月1日に預かった当初の2匹は、それぞれ約8キロしかなかったという。担当者は2匹について「人を信用していない感じで、外のことを全く知らない様子」と話した。その上で5件ほど、譲渡の問い合わせがきているといい「長い時間をかけてね見てもらえる方に引き取ってもらいたい」と2匹の幸せを願った。【沢田直人】

◆甲斐犬 山梨県原産の中型犬。日本犬種の1つで1934年(昭9)に国の天然記念物に指定された。日本犬保存会よると、山梨県を中心にイノシシやシカの猟犬として飼われており、性格は主人に従順。毛色は虎毛で色の濃淡で黒虎毛、中虎毛、赤虎毛に分けられる。体高は雄が約52センチ、雌は約49センチ。