岸信夫前防衛相の引退に伴う山口2区補選は、岸氏の長男、自民新人の岸信千世氏(31)と旧民主党政権で法相を務めた平岡秀夫氏(69)の一騎打ち。

22日、2人はともに最後のお願いに声をからした。

告示前は信千世氏の「優勢」とみられたが、中盤で平岡氏との接戦が伝えられ自民党内に衝撃が走った。森山裕選対委員長に「まさかの展開になっている」と伝えられ、応援を要請されたという林芳正外相は、岩国市の演説で「出陣式での岸さんと、今日の岸さんは別人だ」と述べ、選挙戦を通じて信千世氏が“成長”したと強調。支援団体から「圧倒的な勝利を」とハッパをかけられた信千世氏は「父や伯父(安倍晋三元首相)の背中を見続け、覚悟は決まっている。負けるわけにいかない」と訴えた。

選挙前、華麗なる家系図をHPに公開して批判されるなど、選挙以外の注目が先行。思わぬ苦戦で、伯母にあたる安倍昭恵さんも急きょ応援に入るなど、文字通り「親族総がかり」での選挙戦となった。

一方、平岡氏は岩国市の演説で「家系図ではなく未来図を、家系図ではなく家計簿を見て判断してほしい」と主張。12年衆院選で岸氏に敗れ落選するまで山口2区が地盤で、当選5回を重ねた。10年ぶりの選挙だが、有権者への浸透は早かった。陣営は信千世氏を「世襲の権化」と指摘。応援に入った杉尾秀哉参院議員は「だれが見ても勝てそうにない戦いだったが、地元の世襲政治へさまざまな思いを感じた。自民党は強いが、山口2区で金星を取れば日本の政治は変わる」。岸家の名前が1つの争点になった戦い。どんな結末を迎えるのか。【中山知子】