藤井聡太竜王(王位・叡王・棋王・王将・棋聖=20)が史上最年少での名人獲得と7冠に向け、渡辺明名人(39)に先勝した、将棋の第81期名人戦7番勝負第2局が28日、静岡市の「浮月楼」で行われた。

27日午前9時からの2日制で始まった一戦は、28日午後7時51分、87手で先手の藤井が勝って、連勝。史上最年少名人の獲得と7冠へまた一歩近づいた。2日目の夕方、攻め合いから優劣不明の中盤を抜け出し、白星を手にした。第3局は、5月13、14日、大阪府高槻市「高槻城公園芸術文化劇場」で行われる。

   ◇   ◇   ◇

藤井が息を吹き返した。中盤の攻め合いからチャンスを見いだす。得意の終盤力が発揮できる寄せ合いになれば、お手のもの。「かなりきわどい形でも、しのげていれば」と読み切る。渡辺陣を一気に攻略した。

初日の封じ手前から、構想の立て方がまずいと思っていた。2日目午後1時すぎ、角を3筋から2筋に引く。「こちらの攻め駒が全くさばけてない形で、苦しくしてしまった」。

右手でほおづえをつき、首をがっくりさせたり左右に振る。天井を見上げる。心なしか背中も丸い。せわしないのは、劣勢を意識した時のしぐさだ。夕食休憩明けの午後5時30分すぎに盛り返せると判断したら、背筋が伸びた。主導権を握ると、押し切った。

これで静岡県内のタイトル戦は6戦6勝。一昨年7月の棋聖戦5番勝負第3局で渡辺を下して、タイトル初防衛を果たして以来、相性がいい。「地の利」が生きた。

昨年9月、同じ静岡県内の牧之原市で開催された王位戦7番勝負第5局で、豊島将之九段(32)を下して3連覇を達成した翌日、会見で藤井はこう話した。「昨日の対局のように定跡から外れた場合、局面判断やどう構想を立てていくかが課題」。

その翌月から始まった広瀬章人八段(36)との竜王戦7番勝負、今年1~3月の羽生善治九段(52)との王将戦7番勝負と、対局ごとに経験したことのない局面を突きつけられた。広瀬との第3局の富士宮市対局では、相掛かりから大逆転勝ち、羽生とは第1局の掛川市対局で後手一手損角換わりに苦戦しながらも勝利を手にした。

今局も27日午前10時のおやつ前、20手に満たない段階で前例から離れた。「序、中盤が次への課題だと思います。本局の苦しい将棋を振り返って、次につなげたら」。史上最年少での名人獲得と7冠へ、大きな連勝劇となった。【赤塚辰浩】

【第81期名人戦7番勝負第3局以降の日程】

◆第3局 5月13・14日、大阪府高槻市「高槻城公園芸術文化劇場」

◆第4局 5月21・22日、福岡県飯塚市「麻生大浦荘」

◆第5局 5月31日・6月1日、長野県高山村「緑霞山宿 藤井荘」

◆第6局 6月13・14日、山梨県甲府市「常磐ホテル」

◆第7局 6月27・28日、山形県天童市「天童ホテル」