将棋の第81期名人戦を制して、20歳10カ月の史上最年少での名人と7冠を達成した藤井聡太名人(竜王・王位・叡王・棋王・王将・棋聖=20)が一夜明けた2日、対局会場となった長野県高山村「藤井荘」で会見に応じた。

激闘を終えた1日の夜は0時ごろに寝て、2日午前6時ごろに起きたという。師匠の杉本昌隆八段(54)から祝福のメールが送られてきたが、「返事をしていないので、これから送ります」と笑った。

藤井荘での名人獲得に、「縁を感じる。思い出になるかなと思っています」と話した。

色紙に「名人」と揮毫(きごう)し、「緊張感と同時に改めて実感があった」と振り返る。同時に「名人には、その道で頂点に立つ人という意味合いがあるので、それにふさわしい将棋を指したい。技術を高めていって、面白い将棋が指せるよう、努めていきたい」と語る。さらに、「自分の技術はまだ未熟だと思っているので、そこを見据えて取り組んでいきたいという気持ちが必要です」と強調した。

一夜明けでは、「温故知新」という揮毫もした。1983年(昭58)に21歳2カ月と、当時の最年少記録で名人を獲得した谷川浩司現九段(61)も書いている。「それを意識したところはあります。歴史ある立場に立つことができましたし、昔の棋士の方の将棋も、勉強していかなければと思います」と説明した。

5日には棋聖戦5番勝負の防衛戦が始まる。対戦する佐々木大地七段(28)は、王位戦7番勝負でも挑戦を受ける。合計12番勝負だ。谷川が初めて名人を獲得した時、「名人を1年間預からせていただきます。来年挑戦してくる人に挑戦する気持ちで頑張ります」とコメントしたのを引き合いに出し、「タイトル戦の対局は挑戦者の気持ちで臨みたいと思っています」と話した。

その先には8冠がある。残るタイトルは王座だけ。「まだ長い道のりで、意識する段階ではない。少しでも挑戦に近づけるよう、頑張っていきたい」と気を引き締めていた。【赤塚辰浩】