インターネットの動画投稿サイトで芸能人らを脅迫したなどとして、警視庁は4日、暴力行為法違反(常習的脅迫)などの疑いで、元参院議員のガーシー(本名・東谷義和)容疑者(51)を逮捕した。滞在先のアラブ首長国連邦(UAE)から帰国したガーシー容疑者はTシャツに短パン姿で、成田空港内で逮捕状を執行された。

議員を除名され、逮捕状が取られて3カ月。捜査で外堀を埋められ、最後は追われるように容疑者となって日本に戻った。

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若狭勝弁護士の目 ガーシー容疑者はUAE側から「国外退去勧告」を受けたのではないか。日本側はUAEに身柄拘束を求めていた。旅券は失効し不法滞在の状態だったが、現地では特別なビザがあるともいわれ完全な不法滞在ではなかったのかもしれない。ただ日本政府や警察当局の要請があり、強制的ではなくても退去してほしいという事実上の申し入れがあり、それに応じたのではないか。

常習的脅迫は反社会的勢力に適用される犯罪名で、普通の名誉毀損(きそん)より重い。警視庁は常習的脅迫での起訴を目指すだろう。ネット上で人の名誉を傷つける行為の中で収益も発生しており、名誉毀損よりも悪質だ。起訴され、金の流れを含めた全貌が明らかになれば、執行猶予ミエミエの判決ということはない。実刑の可能性もあると思う。

国外に滞在したまま逮捕もされず「逃げ得」を許せば、ほかの事件への影響も出る。警視庁は丁寧な捜査を行い、UAEとの間で調整を行った結果、協力が得られたのだろう。逮捕のタイミングは早めだった。UAEも当然、日本との外交関係を考える。容疑者を守るのが適切か、日本の協力要請を受けた方がいいのか、てんびんにかけて、判断したのではないか。(元東京地検特捜部副部長)