岸田文雄首相は15日、取材に、21日に会期末を迎える今国会での衆院解散は「考えていません」と明言した。16日以降、立憲民主党が内閣不信任決議案を提出した場合は「即刻否決」を、自民党幹部に指示したとも明かした。首相が13日の会見で、解散の可能性に関して「情勢をよく見極めたい」と踏み込んだことから、「16日にも解散か」と永田町を包み込んだ「解散突風」。首相本人の否定でいったん幕引きとなった。

早期の衆院解散には、自民党内でも懐疑的な声があった。何より解散の明確な「大義」がなかったのが大きい。不信任案提出が大義になるとの党幹部発言もあったが「説得力がなかった」(自民党関係者)。今の衆院議員の任期が2年以上残り、首相が再選を目指す来年9月の自民党総裁選から逆算すると早い時期の選挙は得策ではないという戦略面も、早期解散に否定的な理由として出ていた。

早期解散論が盛り上がったのは、G7広島サミット前後の支持率上昇で「今なら勝てる」という首相や自民党の都合も見え見えだった。しかしサミット後、首相長男の秘書官更迭やマイナンバーカードの不具合、自公選挙協力など、問題が続出。支持率は下落傾向に転じ「早期解散有利」の環境は崩れた。14日には、直近の衆院選なら自民党は40近く議席を減らすとの「衝撃情勢調査」が永田町に出回り、首相の解散戦略に影響したとの見方もある。

近日中の解散なら、選挙戦が7月8日の安倍晋三元首相の一周忌に重なる恐れがあり、安倍派では「静かに迎えたい」(塩谷立会長代理)の声もあった。岸田首相は今後、夏の内閣改造や党役員人事を経て秋の衆院解散を探る腹づもりとみられている。【中山知子】