大量の樹木伐採などに反対の声が強い東京・神宮外苑再開発事業をめぐり、三井不動産など4事業者は17日夜、都内で近隣住民らに対する説明会を開いた。約300人が出席したが、参加できたのは外苑から約380メートル以内に住む住民や事業者約1万3000人に限定。近隣に住みながら対象にならなかった住民も多く「だれのための説明会か」と批判も聞かれた。事業者側は概要などを説明し、計画への理解を求めた。

説明会は2時間の予定を超過。質問は1人2問に限られたという。出席者の1人は「もっと早く実施していたら、住民の声をくみ取り計画を練り直す時間があったのではないか」と指摘。「出席者の範囲を区切ることに何の意味があるのか。次は住民の希望を聞く場を設けてほしい」と訴えた。「憩いの場を壊さないで」との声も聞かれた。

今回の説明会実施を働きかけながら、居住地域対象外で出席できなかった「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」の加藤なぎさ代表は「(事業者は)神宮外苑の価値を取り違えているのではないか。街づくりに市民の声を取り入れてもらえるよう動きたい」と話した。会場の外では「樹木を切らないで」などのメッセージを掲げた人々が抗議の声をあげた。

事業者側は説明会に先立ち、計画の概要などを記した動画と資料を公式サイトに公開。秩父宮ラグビー場と場所を替えて建て替えられる神宮球場を現地で改修できない理由については、「安全面」「サービス・運営面」の課題を挙げ「外周スペースの用地不足」「工期確保の難しさ」と説明。高い関心を集める樹木については「1本1本の樹木を大切に扱い、できる限り樹木を保存してまいります」とし、伐採した樹木は再活用するとしている。

同計画をめぐっては3月に亡くなった音楽家の坂本龍一さんが見直しを求める手紙を送っていたほか、神宮球場を本拠地とするヤクルトスワローズのファンの作家村上春樹氏ら著名人も、反対の声をあげている。説明会は18、19両日も行われる。【中山知子】