21年10月31日のハロウィーン当日、映画「バットマン」シリーズの悪役ジョーカーに扮(ふん)して、東京都調布市を走行中の京王線特急電車内で、乗客1人を刺して車両に火を付けたとして殺人未遂などの罪に問われた無職服部恭太被告(26)の裁判員裁判で、東京地裁立川支部(竹下雄裁判長)は17日までに、懲役23年の判決を確定した。7月31日の判決に対し、検察側と弁護側の双方が8月14日までの期限に控訴しなかった。

判決によると、服部被告は走行中の車両で、男性の胸をナイフで刺し、約3カ月のけがを負わせた。その後、多数の乗客にライター用のオイルをまき車両に火を付けた。争点だった放火による殺人未遂罪については、乗客12人のうち2人について「死亡する可能性がある危険な場所にいたか合理的疑いがある」などと罪の成立を認めなかった。検察側は懲役25年を求刑し、弁護側は懲役12年が相当と主張していた。

緑色のシャツに紫色のスーツを着用し、ジョーカーの仮装で犯行に及んだ服部被告。公判では黒のスーツに丸刈りの頭で出廷していた。判決で竹下裁判長から名前を呼ばれると「はい」とはっきり返事をして被害者側に一礼。竹下裁判長らにも頭を下げた。背筋や指先まで一貫して姿勢を意識しているように見えた。服部被告は判決を言い渡されても声色を変えず、弁護側の席では終始うつむいて無表情のままだった。

竹下裁判長は服部被告の一連の犯行について「凶悪で卑劣である」「被害者の恐怖や不安は計り知れない」などと非難。同様な事件の中でも「特に重い部類の事案」と指摘した。最後に服部被告に対し「長い服役になる。この間に事件、被害者、社会復帰したことを考えて」といい「苦しくても生きてね。償うことを忘れないで下さい」と語りかけた。服部被告は「はい」と小さく返事をした。