海洋放出が始まった東京電力福島第1原発の処理水を「汚染水」と発言し、スピード謝罪と発言撤回に追い込まれた野村哲郎農相(79)は1日の閣議後会見で「福島の皆さま、関係者に不快な思いをさせて申し訳ない」とあらためて謝罪した。

ただ前日の会見に続き、用意した紙を見ながら謝罪を口にする様子に記者から疑問の声が出ると「私は時々、口が滑ってしまう恐れがあるので間違わないように読ませていただいた」と悪びれずに語った。

「気持ちは反省している」と訴えたが、どこまで反省しているのかはかりかねるような発言が、この日も続いた。前日の発言に触れた際には「汚染…」と言いかけ「処理水と言い間違えた」となんとか修正にこぎ着ける場面も。海洋放出後の8月25日の会見では、日本産水産物の全面輸入停止に踏み切った中国の対応を「驚いている。想定は全くしていなかった」と発言しており、当事者意識の薄さと閣僚としての資質には、野党だけでなく自民党からも疑問の声が出ていた。

与党関係者は「担当閣僚の発言としては完全にNG。高齢で、発言は不安定なことが多い」と指摘。野村氏は会見で「改めて緊張感を持って水産事業者に寄り添い職務に当たりたい」と辞任を否定したが、昨年8月の内閣改造で当選4回の参院議員という「大臣待機組」として、78歳で念願の初入閣を果たした経緯がある。岸田文雄首相も更迭を否定したが、政府が水産事業者の支援策を発表した当日の「汚染水」発言は、首相のメンツもつぶした。「内閣改造でお役御免となるのも近いのでは」(野党関係者)という冷めた見方は少なくない。【中山知子】