日本棋院は11日、声明を発表し、仲邑菫女流棋聖(14)が韓国棋院に客員棋士申請をしたと前日10日、韓国の聯合ニュースが報じた件について「報道内容については事実となります」と報道内容を認めた。日本棋院は、日刊スポーツの取材に、日本の棋士が他国の棋士としてプロ申請する例は「おそらくないと思う」と説明した。

また、仲邑女流棋聖サイドから韓国棋院への移籍希望が今年7月に提出されていたことも明らかにした。それを受けて、常務理事会で対応を協議し、移籍を認める方針にしたと説明。それから先の対応は、韓国棋院の承認待ちとした。日本棋院は声明の中で「すでに仲邑菫女流棋聖より韓国棋院への移籍希望の意思表示があり、常務理事会にて客員棋士への推薦を決定いたしました。客員棋士としての受け入れが承認されれば、2024年2月末までは日本で対局、3月以降に韓国での対局を予定しております」と説明している。

仲邑女流棋聖は、韓国女子リーグ「順天湾国家庭園」に所属し、外国人棋士として活動している。日本棋院は同棋聖が参加権利のある国内の公式戦への出場の可否については「時期によって変わるので、それぞれの公式戦への本人の参加意思を確認し、出場する場合は対局日程を調整する」とした。韓国棋院での正式な決定について、日本棋院は「2023年末から2024年初旬の見込であり」と説明しているが、24年2月末まで打つか、それよりも前にやめてしまうのかは未定で、現時点では女流棋聖の防衛戦は出るとした。一方で、上野愛咲美女流名人ヘの挑戦権を争う女流名人リーグ(7人総当たり)に在籍しているが、11月から24年2~3月まで開催されるためリーグを不戦敗にするか、戦うかは未定とした。

韓国は囲碁における世界屈指の強豪国で、仲邑女流棋聖自身、7歳から韓国で囲碁修業を積んでおり、さらに実力を高めたいという思いが、今回の韓国棋院への移籍希望につながったと見られる。一方で、仲邑女流棋聖の天才ぶりは、韓国でも注目されてきた。日本棋院が世界で戦える棋士を育成するために新設した「英才枠」で、19年4月に史上最年少の10歳0カ月でプロ入りすることが同1月に発表された際、韓国メディアも反応。中央日報は同1月30日の電子版で「天才少女菫の1日…囲碁の練習は毎日10時間」とのタイトルで密着特集を展開。起床後すぐに父の信也九段と碁を打ち、朝10時には修業先の韓鐘振(ハン・ジョンジン)囲碁道場で近い世代と対局し、午後9時に寝るまで囲碁漬けの日常を紹介。菫さんは対局中に苦しくなると爪をかみ、負けると大泣きするクセがあったが、涙も我慢し精神面で成長したとも報じた。動画配信サイトのネバーTVやパンドラTVでも、独自の会見映像に加え日本のテレビ局の映像に字幕をつけたものを配信した。