全8冠制覇は思い出のクリームソーダでお祝いしよう-。藤井聡太8冠の誕生を受け、師匠の杉本昌隆八段(54)が日刊スポーツに特別メッセージを寄せた。小学1年時に出会い、小4からは師匠として成長を見守り、支えてきた。前人未到の偉業を達成した弟子に「険峻 八合目」という言葉を贈った。

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20年の棋聖獲得以来、タイトル戦では敗退なく、ここまで来るとは…。弟子だけど、正直、思うのは「こんな棋士が本当にいるのかな」です。ちょっと異次元すぎる。おそらく本人は、8冠を頂点と思っていないでしょうね。でも、いまこのタイミングで、贈りたい言葉があります。

「険峻 八合目」

「八合目」には山小屋があり、ちょっとひと息つける場所でもある。ここまでも当然、厳しかったけど、ここからはもっと厳しくなる。「険峻(けんしゅん)」は、山が高くけわしいこと。「八合目」以降は心身ともに負担が大きくなるかもしれないけど、絶景の大自然に囲まれ、ひと息つける場所でもあるので、ひと息ついてもいいかな。でも、藤井8冠は飽くなき探究心で登り続けるでしょうね(笑い)。

これから登るのは未踏のルートだけど、乗り越えてくれるかな。仮につまずいても、大きなひとつの成長の糧になる。むしろ、そんな相手が現れてほしい気もします。ライバルがいたほうが楽しいでしょうからね。タイトル戦でいつかは負かされることはあるかもしれないが、それを恐れてはいないでしょうね。

お祝い? 藤井8冠とお酒を飲むイメージがないので、アイスコーヒーとケーキセットの方が合うような気がする。カフェで祝いたいですね。いや、アイスコーヒーよりクリームソーダのほうがいいかな。

小学4年の夏、弟子入りを正式にお願いされたのは「コメダ珈琲」でした。そのとき藤井8冠が注文したのは「クリームソーダ」だった。いきなりアイスを沈めて、ソーダがあふれそうになったのを、お母さんが注意しようとしたので「お母さん、私はもう師匠ですので」と制して「いきなりアイスを沈めると、あふれちゃうだろう。アイスを食べるか、ソーダを飲むかしないとダメだぞ」。いまにして思えば、数少ない「指導」の1つでした。

「コメダ珈琲」でクリームソーダを注文させたいですね。「僕、覚えてません」って言いそうな気がするけど、間違いなく沈めたので。師匠としてもう1度、見てみたい景色ですね。

これからも将棋を指していて楽しいと思える風景を見続けてほしい。現時点では何も心配していないけど、いつか年を重ねて、いままでとは違う心境になるかもしれない。将棋が楽しい気持ちをずっと、持ち続けてほしい。(将棋棋士八段)【取材・構成=松浦隆司】

【まとめ】祝!藤井聡太8冠誕生 動画にイラスト、祝福の声など偉業をたっぷりお届け