将棋の最年少7冠、藤井聡太竜王(名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖=21)が全8冠制覇を目指して永瀬拓矢王座(31)に挑戦する、第71期王座戦5番勝負第4局が11日、京都市の「ウェスティン都ホテル京都」で行われ、後手の藤井が勝ち、シリーズ対戦成績を3勝1敗とし、王座を奪取し、史上初の全8冠制覇を達成した。王座5連覇を目指した永瀬は史上3人目の「名誉王座」獲得はならなかった。

歴史的快挙達成に藤井は少し長考し「う~ん、この1年のタイトル戦の結果はよかった。見合った力があるか、まだまだと思う。引き続き実力をつけていくのが必要」と謙虚に話した。

戦型は先手の永瀬が最新の角換わりに誘導。研究手をぶつけるかたちになった。永瀬の早い仕掛けに藤井は序盤から1時間11分、53分、42分と長考を繰り返した。一時、持ち時間で3時間近く開いた。

午後からは中盤のねじり合い。42手目に相手の研究外しに成功すると、永瀬は2時間を超える大長考。終盤は両者が1歩も引かない激闘を繰り広げた。終盤は「苦しいシリーズだった。はっきりと負けにしているところもあった」と振り返るほどのシーソーゲームだったが、最後は藤井が圧倒的な終盤力で鮮やかに寄せきった。

藤井は6月1日、名人を奪取し、羽生善治九段(53)に続き2人目、最年少で7タイトルを保持。その後は棋聖と王位の防衛に成功し、全8冠独占へ向けて残すは王座のみとなっていた。96年、羽生が当時の全7冠を制覇したが、8大タイトル制に移行後、全冠を独占した棋士はいなかった。

5歳の夏、祖母からもらった将棋セットで覚え、すぐ夢中になった。14歳2カ月でプロ入り。デビュー7年弱ですべてのタイトルを手に入れた。20年の棋聖獲得以来、タイトル戦では敗退なく、これで「18連勝」。異次元の強さで棋界を統一した。

将棋の歴史の長さを冠し、「400年に1人の天才」と言われる。好きな言葉がある。「探」。定跡から外れたときこそ、考え抜き、突破口を見つけるのが「藤井将棋」。この日も未知の局面で、反撃の糸口を見つけた。どこまで強くなるのか。21歳の「挑戦」は続く。【松浦隆司】

◆藤井聡太(ふじい・そうた) 2002年(平14)7月19日、愛知県瀬戸市生まれ。杉本昌隆八段門下。12年にプロ棋士養成機関「奨励会」入会。16年10月、史上最年少の14歳2カ月でプロ入り。18年2月の朝日杯で、中学生で初の公式戦優勝。20年棋聖戦で17歳11カ月の史上最年少で初タイトル。今年6月、20歳10カ月の史上最年少で名人に。通算タイトル獲得は歴代7位の18期(竜王2、名人1、王位4、叡王3、王座1、棋王1、王将2、棋聖4)。

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