ロサンゼルス・ドジャース大谷翔平投手(29)の専属通訳だった水原一平氏(39)の違法賭博疑惑が依然として世間を騒がせているが、水原氏を“ハメた”とされる違法賭博の胴元マシュー・ボーヤー氏が運営する違法スポーツ賭博に定期的に参加していたという男性2人が、匿名を条件に米ロサンゼルス・タイムズ紙の取材に応じた。

スポーツ賭博はカリフォルニア州では違法だが、連邦最高裁が2018年に違憲と判断して以降、全米で合法化の流れが拡大。現在首都ワシントンDCを含む38州で合法化されている。コロナ禍でオンラインによるスポーツ賭博も普及し、スマホアプリで簡単に賭けができるようになった。

そんな中、水原氏が違法のスポーツ賭博に手を染めた背景について、南カリフォルニア在住の経験者2人は、「スポーツ賭博を禁止しているカリフォルニアでは、代替手段がない」ことを理由に挙げている。

ボーヤー氏の違法賭博について、「街角に立ってメモ帳に数字を走り書きにし、ポケットに札束を入れているブックメーカーの固定概念とは違い、彼らのやり方はとてもビジネスライクだった」と言及。顧客は、海外サーバーを経由する専用ウェブサイトにアクセスするためのパスワードが与えられ、オッズをスキャンして賭け金を入力することができたという。

ある人物は、賞金や損失は独立した個人間送金アプリを用いてやりとりをしたと証言。別の人物は、勝敗が1000ドルの信用限度額を超えた時に対面でエージェントと直接現金のやりとりをしたと述べている。

また、ある男性は損失の支払い先として複数の見慣れない口座を指定されたことがあると述べ、それは賞金を受け取る義務のあるギャンブラー仲間のものだった可能性があると語っている。この人物によると、賞金は同様に身に覚えのないアカウントから受け取っていたという。

同紙によると、こうしたサイトは通常、利用する顧客ごとにブックメーカーから定額料金を受け取るが、賭け金は一切取り扱わないという。賭けの賞金や損失は、ブックメーカーと賭けを行った人物との間で行われ、間に入るエージェントは顧客によって蓄積された損失の10~20%を受け取る可能性があるという。

初期段階では両者とも慎重になるため、賭け金は少額になる傾向があるが、数カ月かけて信頼関係を築いていくという。「これまでいくつものブックメーカーを利用してきたが、ここは他よりはるかに良かった」とボーヤー氏のスポーツ賭博について一人は語っている。

取材に応じた2人はいずれも、知人の紹介でボーヤー氏の連絡先を教えられて賭けに参加したと証言し、大谷投手と水原氏のボーヤー氏との関係については何も知らないと主張している。

水原氏は、大谷投手の口座からボーヤー氏の関係先に少なくとも450万ドルを送金したと報じられている。大谷投手の弁護士はこの件に関して「大規模な窃盗の被害者」であると主張し、自身も3月25日に行われた記者会見で水原氏の賭博について何も知らなかったと話し、自身の関与を完全否定している。違法賭博の胴元ボーヤー氏は、連邦捜査の対象になっていることが伝えられているが、逮捕・起訴はされていない。(ロサンゼルス=千歳香奈子)