藤井聡太名人(竜王・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖=21)が豊島将之九段(33)の挑戦を受ける、将棋の第82期名人戦7番勝負第1局が11日、東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われ、先手の藤井が豊島を破り、初防衛へ向けて好発進した。2日制の対局は終始互角のまま進み、終盤、先に抜け出しながら決め手を欠いた豊島に対し、冷静な指し手で逆転。141手で開幕局を制した。第2局は23、24日、千葉県成田市「成田山新勝寺」で行われる。

わずかなスキを見逃さなかった。豊島の攻めが緩んだ瞬間、形勢をひっくり返した。序盤、後手の豊島が4手目に9筋の歩を突く趣向を見せ、藤井が横歩取りで対抗する。いきなり大駒がぶつかる前例のない乱戦だ。「想定していない展開で、形として思わしくなく、苦しくしてしまった」。負けも覚悟した。4筋に香を打ち込んだ豊島の指し手に、5筋へと玉が逃げながら桂を取る。「(自玉は)すぐに寄らない」と判断し、勝ちへと結び付けた。

これで、昨年9月の王座戦5番勝負第2局からタイトル戦16連勝。故大山康晴15世名人が1961年(昭36)の九段戦第3局から王将戦、名人戦、王位戦と経て、翌62年の十段戦(九段戦から改称され、のちに竜王戦に)第1局まで17連勝という記録まであと1勝と迫った。

今月は、棋王戦第2局(20日、石川県加賀市)と名人戦第2局が控えている。「(今局は)1手1手難しい将棋で形勢判断の甘いところも出た。第2局にしっかり集中して臨みたいと思います」。1局1局に集中して、昭和の大棋士の偉大な記録をまた超える。