「106億円を熔かした男」こと、大王製紙の社長と会長を務め、カジノに自社の資金をつぎ込んで実刑判決を受けた井川意高(もとたか)氏(59)が14日までに、自身のX(旧ツイッター)を更新。カジノでの負けを「もう1回整理すると、約2兆円が負け」と当初の1兆円から上方修正するとともに、「オレって優秀なギャンブラーじゃん!」と、詳細な収支分析から判明した「新事実」に胸を張った。

井川氏はカジノのバカラ賭博にのめり込んだ2年半で、少なくても総額2兆円を動かしたと分析。勝ちは総額1兆9893億2000万円と見積もり、差し引きの「マイナス106億8000万円」を自身のシンボルにしている。

一方で、自身が主戦場としたマカオやシンガポールのバカラは主催者側の取り分として、勝ち金から1・15%が「ハウスエッジ」として控除される。井川氏が2兆円負けていたとすると、損失106億8000万円が占める割合は0・534%。ハウスエッジの半分未満で、「つまり理論上の半分以下しか負けていない! これってけっこう優秀な成績だぞ!」とドヤ顔だった。さらに「理論上は230億円スッてるはずが、106・8億円しか負けてない。オレって優秀なギャンブラーじゃん!」と自画自賛した。

井川氏は大王製紙の社長だった2009年前後から約2年半、週末になるとマカオやシンガポールのカジノに通い詰めた。土曜の朝7時半から日曜の夜8時まで、ほぼノンストップでバカラ賭博に興じたという。当時は1回の最大賭け金は50万シンガポール・ドル(当時のレートで約3000万円)。同氏はほぼ1勝負で最大金額を賭けており、1時間で約40ベット(賭け)していたという。

単純計算では、3000万円×40ベット×36時間×40週×2・5年で、賭け金総額は4兆3200万円になる。「早々に手持ちを熔(と)かしてプレイ出来なくなったときもあるので、実際のプレイ時間を半分としても約2兆円が負け」と冷静に再計算し、負けた総額を14日までに修正していた。

井川氏は12日、「緊急動画」として自身のYouTubeを更新。銀行詐欺容疑で米連邦地検から訴追されたドジャース大谷翔平投手(29)の元通訳、水原一平氏(39)がスポーツ賭博で約1億8300万ドル(約275億円)負けていたとの報道に一瞬、耳を疑ったことを明かした。「『オレの倍超えちゃってるじゃん。オレの立場どうなるのよ?』と青ざめました」と動揺したが、収支だけを見れば、水原氏はマイナス約4100万ドル(約62億円)。自身の損失106億円には及ばなかったことに、「まだ抜かれなくて一安心です」と安堵(あんど)の笑みを浮かべていた。

井川氏は大王製紙の創業家に生まれ、筑波大付属駒場中高から東大法学部に進み、大王製紙に入社。42歳で5代目社長に就任も会長時代の10~11年、カジノでの使用目的で子会社7社から総額106億8000万円を借り入れていた事実が発覚。会社法違反(特別背任)の容疑で逮捕され、12年に懲役4年の実刑判決により、16年12月まで服役した。出所後に書いた著書「熔ける 大王製紙会長 井川意高の懺悔録」が累計15万部のベストセラーになり、現在は登録人数22万人超のユーチューバーとしても活動している。