ジャーナリストの伊藤詩織さん(35)が、15年4月に元TBS記者の男性から受けた性的暴行被害についての民事裁判で弁護を担当した元弁護団が20日、都内の日本外国特派員協会で会見を開いた。
元弁護団は、伊藤さんが性被害について、自ら調査に乗り出す様子を6年にわたって記録したドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」をめぐり、被害現場とされるホテルの防犯カメラ映像を本人やホテルの許諾なしに使用したと指摘。また、海外では公益通報者にあたる捜査官やタクシー運転手、裁判で代理人弁護士を務めてきた西廣陽子弁護士に関する無断録音や無断録画などがさらされている映像が、流され続けていると指摘している。
「Black Box Diaries」は、3月3日に米ロサンゼルスのドルビー・シアターで授賞式が行われる、第97回米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー部門に、日本人の監督の作品として史上初めてノミネートされた。質疑応答の中で、今回、会見を開いたのは、米アカデミー賞に影響を与えたいからか? と質問が出た。
佃克彦弁護士は「アカデミー賞を取るか取らないかに特段の関心はないが、伊藤さんは必要な説明をすべき」と指摘。その上で、24年12月に「Black Box Diaries」が米アカデミー賞のショートリストに入ったことで「日本での上映を求める声が高まったことが間接的にはある」とした。
その上で「アカデミー賞の投票は、聞いたところによると18日に既に終了しているそうです」と指摘。当初、この日の会見は12日に開催の方向で動いていたが、伊藤さん側から、自分たちにも説明の機会を求めたいと日本外国特派員協会に話があり、作品の日本版を上映後、伊藤さんの会見が行われる予定だったが、当日になって上映も含めてキャンセルとなった。
佃弁護士は「影響を与えたいなら、12日の会見にこだわったと思うけれど、我々はこだわっていない。伊藤さんの話を聞けるならと歓迎し、今日に延ばした」と、米アカデミー賞の授賞式とは関係がないことを強調した。
◆伊藤さんの性被害の一連の経緯 伊藤監督は、米国の大学に在籍した13年12月に元TBS記者の男性と知り合い、同氏が15年4月3日に帰国して会食した際、意識を失いホテルで暴行を受けたと主張。準強姦(ごうかん)容疑で警視庁に被害届を提出した。一方、男性は合意に基づく性行為だと反論し、東京地検は16年7月に嫌疑不十分で不起訴とした。翌17年5月に同監督は不起訴不当を訴えたが、東京第6検察審査会も同9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして不起訴相当と議決した。
伊藤監督は、同年9月に男性を相手に民事裁判を起こし、19年の東京地裁での1審は勝訴。男性の控訴を受けた22年1月の控訴審でも勝訴した一方で、男性の反訴も一部、認容。双方が上告して迎えた22年7月の上告審で、最高裁は双方の上告を棄却。男性に約332万円の賠償を命じた一方、同監督の17年の著書「Black Box」などでデートレイプドラッグを使われた可能性があるとされ名誉を傷つけられたとして、1億3000万円の損害賠償を求めた男性の反訴について、真実性が認められず名誉毀損(きそん)に当たると判断し同監督にも55万円の支払いを命じた。
伊藤監督は、男性との裁判に加え、20年にはSNSによる誹謗(ひぼう)中傷の投稿をした2名、拡散した2名に名誉毀損(きそん)、賛同を意味する「いいね」ボタンを押した自民党の杉田水脈元衆議院議員には名誉感情侵害で、それぞれ損害賠償請求訴訟を起こした。1審で請求が棄却され、控訴審で逆転した杉田氏との裁判含め、いずれも同監督が勝訴した。

