白く、美しく、たくましいヒロインが誕生した。1番人気ソダシ(須貝)が白毛馬としてJRA・G1初制覇を果たした。勝ち時計は1分33秒1。サトノレイナス(国枝)との激しいたたき合いを鼻差、約7センチ差、制した。デビュー以来無敗の4連勝を導いた吉田隼騎手(36)は15年有馬記念(ゴールドアクター)以来のG1勝利。須貝尚介調教師(54)は阪神JF3勝目にして特別な1勝をかみしめた。

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最後の直線で、唯一の白毛の馬体が馬群を割って脚を伸ばした。懸命に追う吉田隼騎手の思いに応え、ソダシは大きなストライドでぐんぐん伸びた。逃げた熊本産馬ヨカヨカをとらえにかかると、外から武豊騎手のメイケイエールが襲いかかる。レジェンドの猛追をしのいだと思った瞬間、内からルメール騎手のサトノレイナスが猛烈な勢いで飛んで来た。かわされたか-。

ソダシはゴール寸前でもうひと伸びした。内か、外か、同着か。入場制限された3473人の観客は固唾(かたず)をのむしかなかった。吉田隼騎手は「必死に追った。最後まで分からなかった」と言った。最後は白い鼻が、わずかに速くゴールに届いた。同タイム、鼻差。写真判定の結果は約7センチ差の決着だった。

着差はわずかでも、歴史的な価値は無限に大きな1勝だった。白毛馬がJRA・G1に挑戦すること自体、08年秋華賞ユキチャン(17着)以来、12年ぶり2頭目の快挙だった。白毛一族の祖、シラユキヒメのデビューから足かけ20年で、史上初のG1星を手にした。それも、今年だけでJRA・G1を8勝するルメール騎手に競り勝った。見てるだけでほれぼれする純白の馬体。きれいな、かわいい女の子が、根性をみせて勝ち切った。

鞍上は「4コーナーの反応は少し鈍かったけど、並んでからかわさせない。勝負根性をみせてくれた」とたたえた。騎手にとって15年有馬記念(ゴールドアクター)以来、2度目のG1制覇。「こんな僕でもG1を勝たしてくれる、本当にいい馬。また、こうやってG1に連れて来てもらえた。ソダシのおかげです。須貝先生、馬主さん、牧場の方、スタッフさん、ソダシに関わったすべての人に感謝したい」と万感の思いを口にした。

「ダート血統」とされるソダシが、芝で無傷の4連勝を飾った。「洋芝なら走るかも。函館に連れていってみては」と担当の今浪厩務員が進言し、芝デビューが決まった。白毛馬として芝の新馬戦を初勝利、2戦目で芝重賞を初勝利した。走るたびに「史上初」が増え、ついに芝G1を初制覇。須貝師は「真っ白な馬がターフを走るのはきれい。競馬を知らない人にも、ソダシを覚えてもらって、(競馬)ファンが増えてくれれば」と笑顔で語った。来年の桜花賞でも、堂々の主役候補。かわいいだけじゃない。強いアイドルホースが、コロナ禍の日本に明るいニュースを届けた。【網孝広】