「ウマ娘 プリティーダービー」リリースから2周年。ツインターボが、新たな育成ウマ娘として登場することになりました。実際のツインターボと言えば「大逃げ」が代名詞で、人気の個性的逃げ馬でした。今回は、ツインターボが勝った93年オールカマーの復刻記事を掲載します。

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韋駄天(いだてん)ツインターボ(牡6、笹倉)が大逃走劇の末、2分12秒6の好タイムでオールカマーを逃げ切った。七夕賞に続く重賞連覇で、天皇賞での最大の惑星馬へと急浮上した。注目を集めたライスシャワー(牡5、飯塚)は、追い込んだものの届かず3着に敗れた。

大方の予想通り、ツインターボが持ち前の快速を生かしてハナを奪う。それが分かっていても場内からは大歓声が沸き起こる。「きょうは果たしてどんな逃げを見せてくれるのか」。1コーナーを過ぎて2コーナーを回った時、一度はやんだ歓声が再びスタンド全体を包んだ。ツインターボが後続馬を引き離しにかかったからだ。

逃げる、逃げる。その軽快な逃げ脚は、衰えるどころかさらに勢いを増していく。向こう正面では2番手を追走するホワイトストーンとの差が、ついに100メートル(約36馬身)近くになった。しかし、この異様な光景に驚いたのは観客席だけで、あん上の中館騎手は意外なほど冷静だった。「後ろの脚音が聞こえないなとは思ったけど、別に気にはなりませんでしたね。ジッとしていました。馬がベテランなので任せていましたから」。何たる自信だ。

後続に50メートルほどの差をつけたまま直線に向くと、スタンドのどよめきはピークに達した。それを合図に中館騎手は「さあ、行こうか」とゴーサインを送る。その名の通り、ターボエンジンが再びうなりを上げると、もう後続馬はなすすべがなく、ゴールでは2着のハシルショウグンに5馬身の差をつけていた。

「相手が一線級でしょ。いつくるか、いつくるかっていう不安はありました。でも出遅れしないでスタートした時点できょうはうまくいったなって思っていましたからね」と中館騎手は会心のレースを振り返った。

さあ、目指すは天皇賞だ。「次も逃げ切ってくれよ」というファンの声援を受けながら中館騎手は「前回より今回、今回より次(天皇賞)という具合に良くなってくれれば……。ええ、頑張ってくれると思いますよ」と不敵な笑みを浮かべた。【深沢一千代】

◆ツインターボ▽父 ライラリッジ▽母 レーシングジィーン(サンシー)▽牡6歳▽馬主 黒岩晴男氏▽調教師 笹倉武久師(美浦)▽生産者 福岡敏宏氏(北海道静内町)▽戦績 14戦5勝▽総収得賞金 1億8531万7600円▽主な勝ちクラ ラジオたんぱ賞(91年)七夕賞(93年)

(1993年9月20日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時