絶対王者オジュウチョウサン(牡11、和田正)が2年ぶり6度目の勝利を挙げた。勝ちタイムは4分52秒3。平地を含め、JRA所属の11歳馬がJRA重賞を制覇するのは史上初めて。J・G1は通算9勝目となり、同馬が持つ最多勝記録を更新。石神深一騎手(39)は節目の障害通算1000回騎乗を、白浜雄造騎手(42)に並ぶ障害重賞最多の21勝目で見事に飾った。

最終障害を飛越したオジュウチョウサンの姿に大歓声が上がる。抵抗するブラゾンダムールを外からねじ伏せ、先頭でゴールを駆け抜けると、石神騎手は左手を力強く振り下ろした。「素晴らしい以外に言葉が浮かびません。オジュウにありがとうと伝えたいです」。検量室前では長沼厩務員が笑顔で人馬を出迎えた。

6連覇がかかった1年前はまさかの5着だった。年齢的に上がり目のない状況から昨年末の中山大障害で復活を遂げ、今回は負けない王者の走りを見せつけた。序盤はビレッジイーグルの背後を確保。それぞれのコーナーでは内ラチ沿いで距離ロスを最小限にする名手の巧みな技術が光る。勝負どころで上がっていくケンホファヴァルト、ブラゾンダムールに対して動じない。「大障害と違って、追いかける番でしたが、かわす手応えがありました」。脚をためていた人馬の仕掛けが上回った。

表彰式を終えた長山オーナーは「これだけの人が応援してくれて本当にありがたいです。よく勝ってくれた」と話し、和田正師も「力の衰えはあるかもしれないが、飛越が上手になってます。頑張ってくれたし、今はしっかり回復させてあげたいです」とねぎらった。秋は中山大障害(J・G1、芝4100メートル、12月24日)、J・G1・10勝目が最大目標になる。記録を更新し続ける絶対王者。オジュウチョウサンは「オジュウチョウサン」という特別な生き物なのかもしれない。【木南友輔】

◆オジュウチョウサン▽父 ステイゴールド▽母 シャドウシルエット(シンボリクリスエス)▽牡11▽馬主 (株)チョウサン▽調教師 和田正一郎(美浦)▽生産者 坂東牧場(北海道平取町)▽戦績 38戦20勝(うち平地8戦2勝)▽総収得賞金 9億4137万7000円(うち平地2592万円)▽主な勝ち鞍 16~20年中山グランドJ(J・G1)16、17、21年中山大障害(J・G1)16、17年東京ハイジャンプ(J・G2)17、19、20年阪神スプリングJ(J・G2)、16年東京ジャンプS(J・G3)▽馬名の由来 家族名より+冠名

◆オジュウチョウサン記録ずくめ JRAの同一重賞6勝目、J・G1・9勝目は同馬が持つ最多記録をいずれも更新。11歳馬のJRA重賞制覇は、06年中山グランドJを勝った外国馬カラジ(せん11)以来。ちなみにカラジは翌年、12歳で同レースを連覇。