武豊騎手(28)の騎乗した外国産馬シーキングザパール(牝、栗東・森)が、ライバル17頭を軽く下して念願のG1初制覇を成し遂げた。勝ちタイムは1分33秒1。今年に入ってからは無傷の4連勝で4歳マイル王の座に就いた。2着にも外国産馬のブレーブテンダー(牡、栗東・池江)が入り、前哨戦のニュージーランドT4歳Sと同じ結果となった。クラシック出走権のある内国産関東馬ショウナンナンバー(牡、大久保洋)が3着に入り、ダービーの伏兵馬として浮上した。

   ◇   ◇   ◇

「楽な勝ち方でした」。武豊騎手のこのセリフがすべてを物語っていた。絶好のスタートを切ったシーキングザパールは、後方からと考えていた大方の予想をあざ笑うかのように、先行集団の直後にポジションを取った。

逃げるパームシャドウが前半の4ハロンを46秒6に落とすスローペースを、しっかりと読んでの好位作戦だ。ハイペースだった前走は後方待機策を取り、4角17番手から一気の差し切りを決めた。前走との対比が見事なまでの手綱さばきだったが、武豊は「僕はただつかまっていただけです」と馬の強さを持ち上げた。

確かに馬もすごい。武豊が「不利だけが怖かった」と振り返るだけあって、余力十分に3、4角を回った。直線で先頭を奪うと、ステッキさえも入れず、まるで調教のような雰囲気でゴールを駆け抜けた。「先頭に立ってからモノ見をしてフラフラしたので、肩ムチを軽く入れただけ」とユタカスマイルを見せた。

これまでにシャダイカグラ、ベガ、ダンスパートナー、エアグルーヴなどの名牝に騎乗しているが「僕が乗ってきた牝馬の中でもトップクラスの馬」最大級の賛辞をシーキングに送った。森秀行師(38)は年末に香港で行われる香港国際カップ(国際G2、芝1800メートル)に挑戦するプランを持っているが、武豊は「将来的にはヨーロッパや米国に行ってほしい」と、本場進出にも意欲を見せた。

シーキングザパールは、このあと宮城県仙台市近郊の山元トレセンに向かい、ひと息入れた後、夏は北海道・早来町にある社台ファームで充電する。まだ4歳の春。この先、どこまで強くなるのかを考えるだけでも楽しい。【多田薫】

◆シーキングザパール ▽父 シーキングザゴールド▽母 ページプルーフ(シアトルスルー)▽牝4歳▽馬主 植中倫子氏▽調教師 森秀行師(栗東)▽生産者 レイジーレーンステイブル(米国)▽戦績 8戦6勝▽総収得賞金 3億92万円▽主な勝ちクラ 96年デイリー杯3歳S(G2)97年シンザン記念(G3)フラワーC(G3)ニュージーランドT4歳S(G2)

(1997年5月12日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時