若き名手がエスコート! ダミアン・レーン騎手(28)騎乗の3歳馬セリフォス(牡、中内田)が、古馬を撃破してG1初制覇を飾った。初コンビだった若き名手に導かれ、豪脚で大外一気を決めた。

今春はマイルG1で連続4着。ひと夏を越して成長した姿で、待望のタイトルをつかんだ。年内は休養の見込みで、今後は状態を見ながら次走を決定していく。

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曇天の仁川で、若き名手の手綱さばきが光った。セリフォスに騎乗したレーン騎手は、4角13番手でも追い出しをじっと我慢した。馬なりのまま、抜群の手応えで大外を進出。残り200メートルを過ぎてムチを1発入れると、それを合図にセリフォスは火の出るような豪脚を繰り出した。上がり最速33秒0。同世代のライバルも、歴戦の古馬も置き去りにして、突き抜けた。

3年ぶりに日本のG1を制したレーン騎手は、開口一番「ベリーハッピー」と笑顔を見せた。「折り合うまでに少し時間がかかったけど、レース後半はうまく折り合えた。直線に入って先頭と離れていたし、ここから届くのはそんなに簡単じゃないと思った。それでもすぐに瞬発力を見せてくれて、アッという間に届くと自信を持ちました」。直線は内を突くプランもあったが、リズム重視で運んだ結果の進路は大外。「本当に馬が強かった」と手放しで評価した。

初コンビだったが、予習はバッチリだった。陣営から渡された過去のレース映像をチェックし「前走は休み明けで勝っていた。そこから少しでも良くなれば、いい競馬ができるのではと思っていた」。最終追いに騎乗し、ストロングポイントだと感じ取った“瞬発力”を信じて、冷静にエスコートしてみせた。

管理する中内田師は「ようやく結果を出せて良かったです。『届いてくれ!』という願いと思いでしたね」と、安堵(あんど)の表情で振り返った。2歳時は朝日杯FSで半馬身差の2着。期待された今春はNHKマイルC、安田記念で連続4着と苦杯をなめた。その後は放牧で成長を促し「いい夏を過ごして、ひとつ成長してくれた」。レース前に招待を受けた香港国際競走は辞退。メイチの仕上げで、頂点をつかんだ。

年内は休養が濃厚で、馬の状態を見ながら、来年は国内外に活躍の場が広がる。新たなマイル王の快進撃は、まだ始まったばかりだ。【奥田隼人】

◆セリフォス ▽父 ダイワメジャー▽母 シーフロント(ルアーヴル)▽牡3▽馬主 (株)G1レーシング▽調教師 中内田充正(栗東)▽生産者 追分ファーム(北海道安平町)▽戦績 8戦5勝▽総収得賞金 3億9570万6000円▽主な勝ち鞍 21年新潟2歳S(G3)、デイリー杯2歳S(G2)、22年富士S(G2)▽馬名の由来 エーゲ海にある島名。母名より連想