<高松宮記念>◇26日=中京◇G1◇芝1200メートル◇4歳上◇出走18頭

春のG1シリーズ開幕戦・高松宮記念(芝1200メートル、26日=中京)は、団野大成騎手(22=斉藤崇)騎乗の12番人気ファストフォース(牡7、西村)が勝利した。担当記者が鞍上のこぼれ話を披露する。

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そのジョッキー人生は“最下位”から始まった。

小学校5年で乗馬を始めた団野少年は、中学校2年時に栗東のジュニアチームに合格した。騎手を夢見る腕達者ばかり。メンバー3人の中には、のちに同期としてデビューする岩田望騎手もいた。

「一番へたくそでした。大会に出ても僕だけレベルの低い方の競技で…。ずっと悔しいと思ってました」

馬上で小さな肩を落とす日々だった。おとなしそうに見えて負けず嫌い。だが、すぐに埋められる差ではない。「せめて体力勝負では勝ちたい」と思い、ひそかに走り込み、持久走では1着になったという。

いつだって悔しさを原動力にしてきた。2年目の20年7月、福島で落馬して病院へ運ばれた。当日に騎乗予定だったラジオNIKKEI賞は、ベッドの上で見た。自分が乗るはずのバビットが逃げ切りそうになると、思わずテレビを消した。

「悔しかったから頑張ろうと思えました」

馬に乗り始めた頃のモチベーションは「できなかったことをできた時」の喜びだった。それは今も変わらない。10度目の挑戦でJRA・G1を制覇。気鋭ぞろいの競馬学校35期生の中でも一番乗りだ。その名前通り、まだまだこれから“大成”していく。【中央競馬担当=太田尚樹】