暗雲から突き抜けた。2番人気ソールオリエンス(牡、手塚)が後方から大外一気の差し切りを決め、3戦無敗で牡馬クラシック1冠目を制した。勝ちタイムは2分0秒6。

キャリア2戦での制覇は2歳戦が実施されるようになった1946年以降で最少。横山武史騎手(24=鈴木伸)は21年ホープフルS以来のG1勝利で苦悩の日々を晴らした。ダービー(G1、芝2400メートル、5月28日=東京)で世代の頂点の座を狙う。

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苦しい。でも、ここからだ。「この馬の強さは僕が一番知っているので」。横山武騎手はソールオリエンスを信じた。4角をふくれながら曲がり、目の前に17頭のライバル。道は内ラチから約15頭分の大外しかない。届くか。息のむ観衆の前で力を振りしぼる。届いた。2着に1馬身1/4差。大興奮の鞍上が、左腕を振り下ろした。「本当に気持ちよかったです」。沸き立つスタンドへ「やったぁ!」。馬上から両手を挙げて引き揚げた。

3年前、名馬エフフォーリアに出会った。翌21年に皐月賞でG1初制覇。同年G15勝。瞬く間にトップジョッキーに駆け上がった。だが、昨年はG1で19戦し2着が最高。「何が足りないんだろう」。苦悩した。他騎手の騎乗フォームを研究。まねもした。7月には騎手対抗戦「シャーガーC」に選出され、イギリス・アスコットに飛んだ。本場の騎手の技を目で、肌で盗み血肉とした。「昨年も内容はいいと思っていましたし、あとは結果を出すだけだと思っていました」。

だからこそ、格別だ。最内枠は「試練だな」。好位を狙うも「行き脚がつかなくて。馬のリズムで運ぶことに決めました」。道中は荒れた内を避けた。1000メートル通過58秒5の超ハイペースも向き、全体の上がりから1秒7上回る35秒5の豪脚を引き出した。「2年ぶりにG1を勝ててやっぱりこれを超える喜びはないですね」。表彰前後には馬場内で飛び跳ねて喜んだ。

次はダービーだ。2年前はエフフォーリアで鼻差の2着。この日も「悪夢のような負け方」と言うほど悔やんだ。「間違いなく僕は成長しているはずなので。技術を上げた姿を、この馬と一緒に皆さんに披露することができたら」。苦しかった。でも、今度こそ突き抜けてやる。【桑原幹久】

◆ソールオリエンス ▽父 キタサンブラック▽母 スキア(モティヴェイター)▽牡3▽馬主 (有)社台レースホース▽調教師 手塚貴久(美浦)▽生産者 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 3戦3勝▽総収得賞金 2億7269万7000円▽主な勝ち鞍 23年京成杯(G3)▽馬名の由来 朝日(ラテン語)