マイル界を完全制圧した。4番人気ソングライン(牝5、林)が84年のG1昇格後では3頭目となる連覇を成し遂げた。

戸崎圭太騎手(42=田島)と大外枠から中団後方を進み、強烈な末脚を発揮した。勝ち時計は1分31秒4。G1馬10頭がそろった一戦で、1年前より着差を広げる勝利を飾った。秋は昨年に挑戦を断念した米国のBCマイル(G1、芝1600メートル、11月4日=サンタアニタ)を目指す。

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戦前の混戦ムードはなんだったのか。ソングラインが荒々しく馬場の中央を駆け抜けた。内にひしめく強豪を残り100メートルで一気にかわし去る。2着セリフォス以下4頭が0秒1差で銀メダルを争う中、ライバル勢に抵抗させる間すら与えなかった。戸崎騎手は「自信を持って乗ることができた」と振り返った。鞍上が右手を小さく握ったところがゴール。1馬身1/4差。言葉通り、力の差を見せつけた。

芝は週末の大雨が乾き、馬場は時間がたつにつれて内有利にシフトしていた。林師は「内にも強い馬がいましたし、祈るような気持ちで見ていました」と胸の内を明かす。大外枠に気をもんだが、視線の先の愛馬はいつでも動ける中団後方確保からビクトリーロードに乗った。G1馬10頭がそろった一戦で、92・93年ヤマニンゼファー、08・09年ウオッカに続く3頭目の連覇達成(84年のG1昇格後)。終わってみれば、昨年わずか首差だった着差は大きく広がっていた。

ピークの先を見た。この中間も攻めて、攻め抜いた。ヴィクトリアMから中2週。同ローテの昨年は5着から栄冠をつかんだが、今年は1着からの臨戦でも状態維持ではなく、上積みを目指した。昨年同様、レース翌週の水曜から馬場入りを再開させると、短い間隔でも3頭併せを2週続けて消化。馬も、耐えた。「夢みたいです。今までで一番、運動の負荷をかけてもパフォーマンスを上げてくれました。かわいらしいだけでなく、アスリートとしても一流です」(林師)。消耗の激しい過密日程となるヴィクトリアM→安田記念連勝は09年ウオッカ以来史上2頭目の快挙だ。

いよいよ、星条旗はためく米国挑戦が近づいてきた。戸崎騎手は「無駄がない、余計なことをしないので。乗っている人間に安心感を与えてくれる馬。ここにきて、さらに成長していると感じる。さらにいい舞台に行ってほしいと思う」と背中を押した。昨年は喉頭蓋の腫れで断念した米国遠征。今年こそはBCマイルで世界の頂点を見る。【松田直樹】

◆ソングライン ▽父 キズナ▽母 ルミナスパレード(シンボリクリスエス)▽牝5▽馬主 (有)サンデーレーシング▽調教師 林徹(美浦)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 15戦7勝(うち海外2戦1勝)▽総収得賞金 7億6483万5300円(うち海外1億352万9300円)▽主な勝ち鞍 21年富士S(G2)、22年1351ターフスプリント(サウジG3)、安田記念(G1)、23年ヴィクトリアM(G1)▽馬名の由来 オーストラリアに伝わる道の名。祖先の足跡