「仕事人」横山典弘騎手(46)の手により、ゴールドシップ(牡5、須貝)が史上初の連覇を飾った。レース前はしきりになだめられ、道中は果敢に先団につけると、最後の直線は横山典騎手に「お願い」されて突き抜けた。昨年同様、緩んだ馬場も味方に2着カレンミロティックに3馬身差のG1・5勝目。今後は未定だが、僚馬ジャスタウェイとともに登録している凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月5日=ロンシャン)への楽しみも膨らむ。

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白い馬体がグイグイ伸びる。後ろでもがくライバルたちを置き去りにし、スタンドの大声援を受けてゴールを駆け抜けた。2着馬に3馬身差。史上初の宝塚記念連覇を完勝で飾った。

「(勝因は)馬がきちんと走ったということ」。ダービーのワンアンドオンリーに続き、関西馬のG1勝利を請け負った横山典はパートナーをほめる。そんなコンビを須貝師は「まさに人馬一体」とたたえた。

ゴールドシップは気性が激しく気分屋だ。前走の天皇賞・春ではゲートに入る際、係員にお尻を押された。「プライドが高く、お尻を触られるのが大嫌い。あれが痛かった」と須貝師。ゲート内でほえて立ち上がり、大きく出遅れた。

騎乗依頼を受けた横山典はゴールドシップに寄り添った。「人間でも初対面だと相手がどんな人か分からない。それは馬でも一緒。実際に会って理解し合わないと…」。本拠地とする美浦から栗東まで、片道5時間要する距離を3週続けて通った。上から押しつけたり指示するのではなく、ひたすら会話する。「お願いするんだよ。僕は乗せてもらう立場。いかに気分よく走ってもらうか」。レース本番でも同じ。レース前は首をなでて落ち着かせ、最後の直線も「お願いします。最後まで頑張ってください」と話しかけたという。

それは須貝師の馬づくりの基本“馬本位”とも合致した。「ノリちゃんと僕の考え方はすべて一致した。何も言うことはなかった」。師も趣味は馬房の前に立ち、ひたすら馬と遊ぶこと。陣営の意思統一が、史上初の偉業を運んできた。「成績が示す通り。これがこの馬の力」と任務を完了した仕事人は胸を張った。

今後は未定だが国内に限らず、登録している凱旋門賞を含め幅広い選択肢から選ばれる。「まずは馬の様子を見てから決めたい」と須貝師。世界1位のジャスタウェイと厩舎のダブルエースは「世界制覇」の夢を広げてくれそうだ。【岡本光男】

◆ゴールドシップ ▽父 ステイゴールド▽母 ポイントフラッグ(メジロマックイーン)▽牡5▽馬主 小林英一▽調教師 須貝尚介(栗東)▽生産者 出口牧場(北海道日高町)▽戦績 19戦11勝▽総収得賞金 11億167万7000円▽主な勝ち鞍 12年共同通信杯(G3)皐月賞(G1)神戸新聞杯(G2)菊花賞(G1)有馬記念(G1)13年阪神大賞典(G2)宝塚記念(G1)14年阪神大賞典(G2)▽馬名の由来 黄金の船。

(2014年6月30日付 日刊スポーツ紙面から)※表記は当時