“二刀流”の新星が、北の大地から誕生した。10番人気ゼルトザーム(牡、加用)が力強く差し切って、2歳世代の初タイトルをつかんだ。勝ち時計は1分11秒7。前走でダートを使った馬の勝利は、84年グレード制導入後では初めて(ダート開催の94年を除く)。スピードとパワー兼備の才能が、重馬場の芝でも生きた。

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函館山をすっぽりと隠す曇天の下、ゼルトザームの脚いろは鮮やかだった。午前中の函館は横殴りの雨。初戦にダートを経験しているこの馬にとって、パワーが問われる重馬場は追い風になった。浜中騎手も「返し馬でも芝の走りはよさそうだったし、雨が降って馬場が重たいので、そういうのはこの馬にとってプラスになると思っていた」と好勝負を予感していた。

大外枠からしっかりとゲートを決め、リズムよく追走。手応えよく5番手で直線に向き、4角で合図を受けるとスッと反応した。直線は、馬場の真ん中を勢いよく加速した。鞍上は「ゴール直前に手綱を緩めた時、耳を立てていて余裕があったし、強かったなと」と相棒をたたえる。17年カシアス以来2度目の函館2歳S制覇となった浜中騎手は、函館重賞も通算4勝目だ。

来年2月で定年の加用師はこれで函館3重賞をコンプリート。「(初戦は)ソエを気にしていたのでダートにしておこうかなと。終わってみれば強い勝ち方。このまま順調に行ってほしいね」と話す。芝開催の函館2歳Sで、前走ダートを使った馬の勝利は84年グレード制導入後では初めて。好センスを持つ快足馬のポテンシャルはきっと、果てしない。【下村琴葉】