ミックファイアの無敗3冠制覇、セレクションセールで“1億円超え”の衝撃落札…、日本のダート競馬&生産界で歴史的な成功をおさめた種牡馬シニスターミニスター(牡20)はどのように日本へやってきたのか-。導入当初の評判から現在の地位を築き上げるまで、そして、将来の展望を連載「邪悪な大臣シニスターミニスターの成功物語」で取り上げる。最終回(第5回)は「これからがプレミアム世代」。導入を決めた有限会社アロースタッド(北海道新ひだか町)の岡田隆寛代表が期待するのはこれから誕生する大物産駒だ。【特別取材班】

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「これから生まれてくる産駒は“プレミアム・シニスター”ですね」。活躍馬が多くなったことで繁殖の質も上がり、産駒が高額で落札されるようになったことはもちろんだが、シニスターミニスター自身、高齢化のため、産駒の希少化が進んでいく。シニスターミニスター産駒が貴重になっていくことは必然だ。「もう20歳になりましたし、種付けの頭数は無理をしていません。ただ、今の繁殖牝馬のレベルを考えると、晩年に大物を出す可能性は十分あると思っていますし、出してほしいです。自分のペースで走るとしぶとくて強いシニスターミニスター産駒の大物を」。言葉をはずませる。

岡田代表にとって、初めて海外で種牡馬を購買してきたのがシニスターミニスターだった。「シニスターミニスターがこれだけの結果を出してくれたので、アロースタッドでは少しだけシンジケートを組みやすくなったかもしれません」。同じように米国から輸入し、産駒がデビューしているのがシャンハイボビー、カリフォルニアクロームだ。シャンハイボビーからはさっそくサンタアニタダービー2着のマンダリンヒーローが出た。

「(昨年種牡馬入りした)フィレンツェファイア(スパイツタウン系ポセイドンズウォリアー産駒で、G1シャンペンSなど重賞9勝。2着に敗れた21年のG1フォアゴーSでは競り合った相手をかみ付きにいったことで有名に…)もいますし、国内で活躍した馬たちも積極的に導入しています」。今年からアロースタッドでけい養されているのが、カデナ、サンライズノヴァ、ジャンダルム、ステルヴィオ。「新しく先日引退が発表され、高松宮記念を勝ったファストフォースもけい養することになりました。芝のレースもアロースタッドの種牡馬に活躍してもらえれば」。

日本最大手の社台スタリオンステーションも世界中からさまざまな種牡馬を導入している。ブリーダーズスタリオンステーション、優駿スタリオンステーション、ビッグレッドファーム、ダーレージャパン、イーストスタッド、レックススタッド、公益社団法人の日本軽種馬協会(JBBA)なども同様だ。生産者たちのたゆまぬ強い馬づくり、そのなかで大種牡馬が誕生し、血がつながっていく。

エーピーインディの孫という血統的な魅力、ブルーグラスSの圧勝劇があったとはいえ、その後の成績がサッパリだった馬をどうして購買できたのか。「実際に馬を見たとき、歩様は良くなかった。ただ、ケンタッキーダービーを目標に仕上げていって、本番は超ハイペースで競り合って大敗したので、その反動が翌年までずっと残っていたんだと思います」。

クレーミングレース(オーナーが出走馬を売りに出している競走)で負け続けていた馬が日本の競馬関係者の熱意で見いだされ、大人気のトップサイヤーへ。シニスターミニスターの成功物語は競馬の1つの面白さであり、この物語の続きを楽しみに待ちたい。

(おわり)