充実の夏を過ごした。怪物級の末脚で今年の皐月賞を3戦無敗で制したソールオリエンス(牡3、手塚)の夏休みを東京・桑原幹久記者がリポートする。

放牧先の宮城・山元トレーニングセンター(トレセン)を直撃した。首差の2着で惜しくも無敗の2冠を逃したダービーから約2カ月半。秋初戦のセントライト記念(G2、芝2200メートル、9月18日=中山)へ向け、心身ともにパワーアップを遂げていた。

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圧倒的なオーラだ。ソールオリエンスが太陽の下に、悠然と現れた。記者の前でぴたりと止まり、均整の取れた金色の肉体を「どうだ」とばかりに見せつける。山元トレセンの上水司場長は「幅も出ましたし、なかなかな馬体だと思いますよ」と、ほおを緩める。体重は8月上旬時点で475キロほど。ダービーの460キロから一回りふくらみ、筋肉の盛り上がりが目を引いた。

最たる進化はメンタルだ。約10分ほどの取材中、シャッター音、他馬の声にも全く動じない。「頭がいいし肝が据わっていますね。春に比べてメンタルの上下がなくなったと思います」。日ごろから携わる厩舎担当者も「兄貴気質で“ソールさん”と呼んでいます」と笑みをこぼす。

ダービーから4日後、6月1日に同トレセンへ戻った。1週間程度の状態確認を経て、早くも6月中旬には秋への立ち上げを開始した。同場長は「体重、毛づやも落ちず、すぐに乗り出せたのは中身の強さだと思います」とうなずく。午前4時からマシンで体をほぐし、5時から坂路へ。30分程度で引き揚げ、馬房でケアに回る。「大きく体を使った走りができていますし、乗っている人の感触もいいですよ」と至極順調だ。

来週にも美浦へ移動し、秋は菊花賞トライアルから始動する。「追われる立場ですし負けられないですよね」と力は入るが「長距離血統で伸びしろも多いので、むやみに体重は増やしていません」と自然な成長曲線を邪魔しない。秋薫る中山でどんな走りを見せるか。もう、待ち遠しい。【桑原幹久】

■半弟フォティーゾは基礎体力強化

ソールオリエンスの半弟フォティーゾ(牡2、宮田、父キズナ)も、山元トレセンで鍛錬を積んでいる。北海道から同トレセン経由で美浦入りし、ゲート試験を合格。現在は基礎体力の向上に努める。上水場長は「460キロ台ですが、体を大きく見せますね。素直で反応が良すぎる面はこの血統らしさだと思います。切れるタイプの兄と違って、長く脚を使う印象。現状では距離があった方がよさそうです」と期待する。初陣は11月中旬を見据える。