06年オークス、秋華賞の牝馬2冠を制し、JRA賞最優秀3歳牝馬および最優秀父内国産馬を受賞したカワカミプリンセス(牝20)が、11日に起立不能となり死亡した。当時、同馬の取材にあたっていた岡本光男記者が悼む。

牝馬クラシック第2弾のオークスには複数のステップレースがあるが、トライアルレースのスイートピーSを勝った馬は、オークス本番で苦戦続きだった。桜花賞組などと比べて圧倒的にレースのレベルが落ちること、オークスまでのレース間隔が短く、疲れが抜けきらないことが原因だろうと思われた。

それでも、あえて記者は06年オークスでスイートピーSの覇者カワカミプリンセスに◎を打った。記者の予想における数少ない自慢話の1つだ。3番人気で単勝配当が670円しかつかなかったのが不満ではあったが…。

このスイートピーSからオークスへ至る過程に、この馬の素晴らしさが凝縮されていたと思っている。スイートピーSでは直線に向いても前の馬との差が大きく、とても届きそうになかったが、鬼気迫る末脚で差し切った。その後、オークスまで中2週しか間隔がなかったが、レースからわずか10日目に栗東Cウッドコースで併走追いを断行。古馬のマイハッピークロスに首差先着した。主戦の本田騎手(当時)が「中2週でこれだけやれるのが体調のいい証拠。動きは良かった」と満足げに話していたのを思い出す。

訃報を受けた西浦勝一元調教師は「とにかく気が強くてね。牝馬だけどカイ食いが旺盛で、思うような調整ができた」と思い出話を語っておられた。負けん気が強く、ご飯をいっぱい食べられたからこそ、タフなローテーションでオークスを勝てたのだろう。スイートピーSをステップにオークスを勝った馬はカワカミプリンセスだけだ。

とにかく魅力のある馬だった。【中央競馬担当・岡本光男】