あなたの予想に本場のエスプリを-。凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月1日=パリロンシャン)を直前に控え、今年も現地フランス・シャンティイで開業する日本人の清水裕夫調教師(41)が日刊スポーツ読者のためにポイントを伝授する。勝敗の鍵を握るのは例年と異なる馬場状態だ。

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単刀直入に切り出した。「今年のポイントはおそらく良馬場に近い馬場になることでしょうか。こういう年もあります」。29日の時点でパリロンシャン競馬場の芝は重馬場と発表されているが、今週は好天の日が続き、レース当日まで降雨はない天気予報。19年から昨年まで4年連続で道悪での開催となったが、今年の凱旋門賞ウイークエンドは違う雰囲気になりそうだ。

「そして、今年の仏ダービー馬エースインパクトの扱いをどうするのかでしょう。現在、5戦全勝で来ています。この馬が順当に勝つかもしれません。ただ、もし負けるとなった場合はどのようなケースが考えられるのか、が予想のベースになるのではないでしょうか」。清水師は3つの克服すべき課題を指摘する。

「まず、初距離。初のロンシャン、初の古馬相手。負ける要素は十分すぎる程にあるとも思います」。トラックレコードで制しているが、仏ダービーが2400メートルから2100メートルに距離を短縮した05年以降、同年に凱旋門賞を勝った仏ダービー馬はいない。

実は清水師が早くから伏兵として名前を挙げていた馬が2頭いたのだが、ともに追加登録で参戦に踏み切ってきた。「今年の独ダービー馬ファンタスティックムーンは前哨戦のニエル賞でパリ大賞覇者フィードザフレーム、仏2000ギニー覇者で仏ダービー3着のマルハバヤサナフィを破っており、絶好調だと思います。良馬場が得意なタイプです。アイルランドから参戦するハーツクライ産駒のコンティニュアスも不気味な存在になりそうです。春に仏ダービーに挑んだときは好位から8着に沈みましたが、夏を越えて、充実度は目を見張るものがあります。古馬勢にはキングジョージ6世&クイーンエリザベスSを勝った人気のフクムもいますし、日本のスルーセブンシーズにも頑張ってほしいのですが、個人的には勝ち馬は3歳勢から出そうかなというのが、私の戦前の予想です」。

過去2年はディープボンドを受け入れてきた清水厩舎。目標に「日本人調教師初の凱旋門賞制覇」を掲げる若きトレーナーは今年も熱い思いでロンシャンの熱戦を見届ける。【木南友輔】

◆清水裕夫(しみず・ひろお)1981年(昭56)10月31日、千葉県柏市生まれ。受験最難関の開成中・高を卒業し、日本獣医生命科学大で馬術を学んだ。17年にフランスの調教師試験に合格し、18年にシャンティイ地区で開業(小林智師に次ぐ日本人2人目)。凱旋門賞馬モンジューのハモンド師から19年末に厩舎を引き継いだ。角居勝彦元調教師や田中博師など日本の関係者とも親交があり、管理馬で坂井、大野がフランス初騎乗初勝利を挙げている。好きなサッカーチームは柏レイソル。趣味は料理。独身。

◆凱旋門賞 フランスで1920年に創設。毎年10月の第1日曜日に開催される、芝2400メートル路線の世界最高峰レースで今年で102回目を迎える。調教国別では地元フランスが68勝で最多勝。英国16勝、アイルランド8勝、イタリア6勝、ドイツ3勝。日本調教馬は69年スピードシンボリからのべ33頭が参戦し未勝利。99年エルコンドルパサー、10年ナカヤマフェスタ、12・13年オルフェーヴルの2着が最高となっている。

◆コースガイド 2400メートルの凱旋門賞は右回りの芝大回りコースで行われる。後方に風車が見える1、2コーナー中間からスタートし、最初は長い直線を1000メートル近く駆け上がる。その後は2段階に分けて、右にカーブしていく。最初は緩やかに坂を下り始め、カーブの角度がきつくなったところから始まるのがフォルスストレート。最後の直線は533メートル。直線の残り450メートル付近から仮柵がなくなり、内側に約5メートル幅のスペースが生まれる(オープンストレッチ)。直線自体は平たんで末脚の切れ味を要求されるが、長い坂を下ってきた後のため持久力も要求される。

◆当日の天気予報と馬場状態予測 29日にフランスギャロが発表したパリロンシャン競馬場の馬場状態は、日本での重馬場にあたるSOUPLE。10段階で5番目に重い馬場となっている。ただレース当日の10月1日は晴れ予報で、それまでに降雨はないよう。散水を行った場合も含めて馬場状態は、やや重~良(BON SOUPLE~BON)が予測されている。近年日本馬を苦しめた極悪馬場は避けられる見込み。

◆昨年のVTR 英国牝馬アルピニスタがG1・6連勝を飾った。好位追走から残り300メートルで逃げるタイトルホルダーに馬なりで並びかけると、一気に突き抜けて半馬身差で勝利した。2着は仏ダービー馬のヴァデニ、3着は前年の覇者トルカータータッソだった。日本馬は過去最多となる4頭が参戦したがレース直前の雨に泣き、タイトルホルダーが11着、ステイフーリッシュ14着、ディープボンド18着、ドウデュース19着。

<馬券ガイド>

▼発売時間 インターネット投票の即PAT会員、A-PAT会員が対象。10月1日午前7時から発走予定時刻の2分前まで。UMACA投票(キャッシュレス)は、当日中央競馬の発売を行う競馬場・ウインズなどの「UMACA投票機」で発売(詳細はJRAのHPで)。

▼発売式別 単勝、複勝、馬連、ワイド、馬単、3連複、3連単の7種類。

▼オッズ 国内独自オッズで払戻率は国内の馬券と同じ。JRAプラス10の対象競走。