火曜朝、水曜朝、そして、今朝も美浦トレセンの南スタンド前を通って、ダービー馬タスティエーラが馬場に向かっていきました。日曜の菊花賞は2着。皐月賞も2着に入り、3冠を見事に完走しました。「元気だよなあ」。一緒に話していたジョッキーがポツリとつぶやきました。次走がどこになるのかは今後の状態次第だと思いますが、昨日発表された香港国際競走(12月10日=シャティン)の登録馬の中に、その名前もあったので、香港も選択肢に入っているのでしょう(カップとヴァーズに登録)。
昨日は香港国際競走(HKIR)の登録馬の発表があり、アメリカでは11月3、4日に行われるブリーダーズカップ諸競走(サンタアニタ)のプレエントリーが発表されました。
今夏、ある調教師と話しているときに「暮れの香港へ行きたいので、選ばれるように、しっかりレーティングをもらえるレースをしないと…」という言葉があり、またあるときは、ブリーダーズカップ諸競走の出走枠について、話すことがありました。国際競走へ出走するには選出されるために国内の馬、海外の馬との争いに勝たなければいけません。
今週日曜の天皇賞・秋は今年ここまで世界ランクトップに君臨するイクイノックス(牡4、木村)が出走します。日刊スポーツの紙面でも紹介しましたが、3月のドバイシーマCで129ポンドのレーティングを獲得し、ここまで今年の「ロンジン・ワールドベストレースホースランキング」首位の座をガッチリとキープしています。
今朝の美浦、スタンド前でこんな会話になりました。「レーティングは着差至上主義だから着差がつきやすい欧州やアメリカの方が有利だし、日本の競馬は着差がつかないからねえ…」と。ふと、思います。14年のジャスタウェイはドバイデューティフリー(現ドバイターフ)のパフォーマンスで世界トップの座をつかみました。今年のイクイノックスもドバイの走りを評価されてのもの。日本調教馬が首位に立つことはうれしいですが、日本のG1競走の内容で評価されたものだったら、もっとうれしいのではないのかな、と。
なかなか難しいとは思いますが、ひそかに期待しているのが、今週末の府中、イクイノックスにドバイに負けない素晴らしいパフォーマンスを見せてもらいつつ、イクイノックスと好勝負を演じる馬、あるいは負かすような馬たちが出てきて、自己ベストのレーティングを獲得し、さらに続くジャパンCや有馬記念で高いレーティングを獲得することで、「天皇賞・秋、もしくはその先のジャパンC、有馬記念が今年の世界一のレースになって、そこを勝った日本馬が世界一になること」です(※表現がまわりくどくて、申し訳ありません)。
国際競馬統括機関連盟(IFHA)が発表する昨年度(22年度)の「トップ100・G1競走」(※年間レースレーティングによる順位付け)のランキングで日本トップは皐月賞の15位タイでした。ジャパンCと天皇賞・秋が17位タイ、有馬記念と日本ダービーが19位タイ。昨年はアメリカにフライトライン、英国にバーイードという強烈なスターホースがいたことで、相対的に日本の馬、G1レースの評価が下がってしまったように思います。
一昨年(21年)は天皇賞・秋が4位、有馬記念が8位。さかのぼっていくと、20年はジャパンCが3位、天皇賞・秋が4位タイ。19年は宝塚記念が5位、有馬記念が6位タイ。18年はジャパンCが7位タイ。17年はジャパンC、天皇賞・春が12位タイ。16年は有馬記念が13位タイ。IFHAがこの「トップ100・G1競走」の発表を始めた初年度の15年はジャパンCが7位なのですが、このときは初回のため、“13~15年の3年間の平均”で発表されていました。実はその前年の14年、年間レースレーティングで世界トップの数字だったのが、ジャパンCです。エピファネイアが4馬身差で圧勝し、ドバイで130のレーティングを獲得したジャスタウェイが2着。3着に天皇賞・秋を勝ったスピルバーグが入り、4着に同年のドバイシーマC覇者でジャパンC3連覇を狙ったジェンティルドンナという結果でした。
現在の競馬というスポーツにレーティングは欠かせません。「レーティングなんて…」という思いを抱きつつ、一方で「レーティングは大事」という思いも抱いています。今年は世界中が日本のイクイノックスの強さを認めており、ドバイシーマCの129という数字があります。日本馬の評価、日本のG1競走の評価が上がるチャンスです。
年間レースレーティングでいくと、イクイノックス、エースインパクト、ウエストオーバー、モスターダフ、フクムが上位に入っている凱旋門賞、ドバイシーマCが強敵になりますが、今週の天皇賞・秋でイクイノックスが強い競馬をしながら、周囲の数字を引き上げ、ジャパンCで124のレーティングを持つタイトルホルダー、秋華賞で120のレーティングを持つリバティアイランド(牝馬は年間レースレーティングの換算時に4ポンド足される)、外国から参戦する強豪と激突し、さらに有馬記念が盛り上がって…、そう、頭の中で思い描いています(※もちろん、BCクラシックでウシュバテソーロがぶっちぎりの走りをして、世界一のレーティングを獲得するケースも期待しながら…)。
午後2時、天皇賞・秋の枠順が出ました。美浦トレセンの記者席も盛り上がってきています。