朝日杯FS(G1、芝1600メートル、17日=阪神)の最終追い切りが13日、東西トレセンで行われた。G1レースの調教を深掘りする「追い切りの番人」では、大阪・明神理浩記者が、デイリー杯2歳S覇者ジャンタルマンタル(牡、高野)の日々の調整と追い切りのつながりに注目。時計だけでは分からない高野友和調教師(47)の意図を探った。

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新馬戦、デイリー杯2歳Sと連勝。高野師は現時点でのジャンタルマンタルについて「競馬のセンスが良くて能力が高い」と最大級の評価を与えている。

となれば、朝日杯を迎えるにあたって求めるものは「何か違うことをして、さらにグ~ンと良くなる」といった類いのものではない。「これまでと同じ過程で、これまでと同じような上昇曲線を描いていくこと」だ。新馬からデイリー杯まで中4週。中間、2週間ほどの放牧。デイリー杯から今回も同パターンをとっている(中4週、2週間ほどの放牧)ことが、その裏付け。高野師は「このままいってほしい。その1点です。そのための確認を毎日行っています」と言う。その確認事項は「力む場面をつくらないことです。普段の運動とかCウッドでのキャンターとか。今のところ調教は問題ないです」。レースでセンスのいい走りをするための源となる、力みのない状態を保つように努めてきた。

6日の1週前追い切りは坂路で助手が騎乗して54秒8-12秒1。ゆったりとした雰囲気で駆け上がって、ラスト1ハロンだけはしっかりと反応。師も「やり過ぎないよう整えながら、出すべき反応は出しながら理想通りでした」と振り返る。

仕上げの13日は新コンビを組む川田騎手が騎乗。師は事前に厩舎のコンセプトを伝え、具体的な数字も提示した。川田騎手も理解した上で騎乗し、坂路を馬なりで4ハロン52秒9-11秒8の数字を出した。4ハロンはこれまでで最も速いタイム。師は「(騎手が乗ったことで)スイッチが入っていましたが、引っ掛かることとは無縁でした。時計が速くなるのも想定の範囲内です」。時計が出たことではなく、必要以上に力が入っていなかったことで、納得顔を見せた。

「川田騎手も素質を感じてくれて、いいコンタクトをしてくれました」と改めて手応えも口に。あとはレースまで今の落ち着いた状態をキープするだけ。そうすれば結果はおのずと出る。【明神理浩】

◆高野友和(たかの・ともかず)1976年(昭51)2月4日、福島県生まれ。02年4月JRA競馬学校厩務員課程入学。同年7月から栗東・松田国英厩舎で厩務員、調教助手を務める。10年に調教師免許取得、11年開業。今年はマイルCSをナミュールで制覇。JRA通算362勝、重賞25勝(G1・5勝)。