自分は(予想で)泣いてばかりな気がする12月ですが、泣いても笑ってもやってくるのが有馬記念です。いよいよ有馬記念ウイークが始まりました。
今朝、自宅のポストに届いた日刊スポーツの1面は寺尾さん(錣山親方)の訃報でした。熱心な相撲ファンだったわけではありませんが、自分が保育園、小学校に通っていた頃の、いつもテレビで見たカッコいいお相撲さんの筆頭が寺尾さんでした。紙面には前相撲から引退までの成績表が載っていて、最高位は関脇、1度も幕内での優勝はないのですが、カッコいいお相撲さんだったなあ、とあらためて思いました。
早朝に新聞を読み終えた後は、カナダの競馬の成績を確認。17日(日本時間の18日朝)がウッドバイン競馬場の今シーズン最終日で、木村和士騎手が見事に3年連続のリーディングジョッキーに輝きました。本人に連絡すると、今年もシーズンオフはサンタアニタ(米国西海岸)で騎乗するとのこと。サンタアニタ初挑戦だった昨年末から今春にかけては重賞制覇があり、G1制覇があり、4月にはサンタアニタダービーでマンダリンヒーローとの2着があり、その結果、ケンタッキーダービーへの騎乗も果たしました。サンタアニタの開催は年末というか、来週火曜(26日)からスタートするため、日本には帰国しないとのこと。今後の活躍からも目が離せません。
そして、有馬記念…、の前に朝日杯FSの振り返りをしなければ…(自分の◎セットアップは7着でした)。ジャンタルマンタルの勝利は厩舎の仕上げ、騎手の手綱さばきの素晴らしさはもちろんですが、この馬を生産した名門「社台ファーム」の底力を感じさせるものだったと思います。
社台ファームの生産馬で、米国からの持ち込み馬(お母さんのお腹に入って輸入された馬)、お母さんが重賞ウイナー。「じゃあ、超良血の高額馬なのか」というと、この馬の場合はそうじゃないと思います。
ジャンタルマンタルの母インディアマントゥアナが落札されたのは、20年のキーンランド社のジャニュアリー(1月)セールでした。その年ごとに異なりますが、キーンランド社のセールといえば、9月の1歳馬セール(セプテンバー・イヤリングセール)、11月の繁殖セール(ノベンバー・ブリーディングストックセール)をすぐ思い浮かべます。
1歳馬と繁殖牝馬が数多く上場される1月のセール(ホース・オブ・オールエイジズ・セール)。20年のこのセールで社台ファームは繁殖牝馬を2頭落札しました。1頭は52万5000ドルのインフレイムドという牝馬(G1ハリウッドダービーなど重賞7勝を挙げたモーフォーザの母)。もう1頭が10万ドルで落札したインディアマントゥアナでした(アクセラレートの子を受胎)。
庭先取引で欧州の素晴らしい成績を残した牝馬を手に入れたり、セールで高い金額で落札したり…、高額で馬を落札する一方、決して高くない価格帯で発掘した馬の子が走ることも名門牧場は知り尽くしているのでしょう。胎児は競走馬になれなかったのかもしれませんが、インディアマントゥアナにパレスマリスを種付けし、日本へ連れてきて、生まれた子(ジャンタルマンタル)が3戦無敗でG1馬に輝きました。
当時、パレスマリス(父カーリン)をけい養していたのはスリーチムニーズファーム。インディアマントゥアナに種付けした20年は、初年度産駒の2歳戦の活躍によって、前年の1万5000ドルから2万5000ドルに種付け料が上がった年でした(23年の種付け料は7500ドル)。初年度産駒の2歳戦の走りを見て、数多くの米国の種牡馬から交配相手にパレスマリスを選んだことも英断に違いありません。
インディアマントゥアナの現役時代の主な勝ち鞍は18年のG3「レッドカーペット・ハンデキャップ」の勝利です。映像を見直すと8頭立て7番人気、軽ハンデを生かし、大逃げを決めたレースでした。デルマー競馬場で行われるこの重賞、「聞き覚えのあるレース名だ」という方もいると思います。16年に米国遠征したオークス馬ヌーヴォレコルト(社台ファーム生産)が岩田康騎手を背に制した、あの重賞です。ハリウッドパークで「ビバリーヒルズ・ハンデキャップ」という名前で行われていた11年にはマリブピアー(ダノンベルーガ、ボンドガールの祖母)がこのレースを制していました。
ノーザンファーム生産馬の快進撃が続く中、朝日杯FSで底力を見せた名門「社台ファーム」。生産馬は有馬記念にスターズオンアース、ソールオリエンス、ヒートオンビート、ホウオウエミーズの4頭が名前を連ねています。先週のジャンタルマンタルと同じ社台レースホースの所有馬、“黄色と黒の縦縞”の勝負服はみんなが気になっていると思いますし、どの馬も魅力的ですね。
昨日、今日と日本中、寒い日になっています。体も心も暖かく、元気に行きましょう。今から美浦トレセンへ。明日は有馬記念、そして、土曜の大一番、中山大障害の取材も楽しみです。【木南友輔】