今朝、自宅を出るときに長男(小学校2年)が言いました。「お父ちゃん、今日、中山大障害でしょ」。

日刊スポーツの競馬面を開き、出走箱を見ます。「俺は石神君(マイネルグロン)と五十嵐君(ニシノデイジー)を応援しよっと」と長男。最近は以前ほどの競馬熱はありませんが、新型コロナウイルスが流行って自宅にいること、競馬中継を見ていることが多かった当時、長男は障害競走が大好きでした。特に好きなのが石神騎手と五十嵐騎手で、この2人は騎乗フォームを見ただけでわかってしまうほどでした(※今はそんな能力はなくなってますが…)。

「石神君は断然人気だよ。五十嵐君は今回、そこまで自信はなさそうだったけど、ニシノデイジーは去年勝った馬だから勝ってもおかしくない」「お父ちゃんは?」「草野君だ。石神君も五十嵐君もすごい。でも、今回は草野君だ。大江原君にも勝ってほしいけど」。そう言い残して、自分は中山競馬場に向かいました。

レースを見て、日曜の予想をして、原稿を打って、昼には中山競馬場の厩舎地区に到着した関西馬を取材。そして、中山大障害の時間がやってきました。素晴らしい青空の下、人馬が馬場入りします。このレースが現役最後の騎乗となる平沢騎手を紹介するアナウンスにはスタンドから大きな拍手と声援が…。

レースの結果はご存じだと思いますが、石神騎手と○マイネルグロンが強烈なパフォーマンスで新王者に輝きました。積極的に運んだ五十嵐騎手と△ニシノデイジーが2着。大江原騎手と☆ビレッジイーグルが粘るところを、◎エコロデュエルは最後に3着。みんな頑張りました。

「本当に頑張ってくれました。今日は機動力の差、経験の差です。マイネルグロンも大障害コースは初めてでしたけど、デュエルはまだ4歳。これからです。これから63キロを背負ったときの飛越を覚えてくれれば。本当に体幹がしっかりした馬です。僕の方がバラバラになってしまって申し訳なかったけど、最後まで頑張ってくれました」(草野騎手)。前日のスクーリングの様子を聞くと、「気合が入ってて、大竹柵を飛ぼうとしちゃって大変でした。明日の本番も集中して走ってよ、って思いましたが、しっかり走ってくれましたね」と苦笑いでした。

前走は道悪でいいところなく敗れた△ニシノデイジー。昨年の快勝劇を思い出させる積極策に五十嵐騎手は「頑張ったでしょ?」とうれしそうでした。大江原騎手は「他の馬と一緒に走る形になると頑張ってくれる。なかなかこういう形の競馬はできなかったけど、頑張ってくれました」と声をはずませていました。大障害は初挑戦の一昨年が5着、昨年が5着、今年は4着。母トキノナスティアも祖母ブランディニーも中山の障害競走で活躍したビレッジイーグル。一族には皐月賞2着シャコーグレイド、障害帰りで日経賞を勝ったテンジンショウグンがいて、6代母には1956年の中山大障害覇者ハクレイがいて、そして、ハクレイの孫があのグランドマーチス(障害競走の活躍で顕彰馬に輝いた唯一の馬)です。無事に、来年の春のG1でまた、大江原ビレッジイーグルの走りが見たい、そう思います。

いつも男前なコメントをくれる石神騎手。今週の水曜朝、調教後の障害試験を終え、ひと息ついたところで話しました。「チャンスだと思うんです。僕のことじゃなく、グロンはスターになる可能性があると思う。3連勝で東京ハイジャンプを勝って、ここも勝てれば、障害競走のスターになれる。ゴールドシップ産駒で、オジュウ(オジュウチョウサン)と同じステイゴールドの系統。何か悪さをしようとするときの身のこなしの瞬間的な速さがすごいんですよ」。勝てば2年連続のリーディングジョッキーが近づく一戦。「今回は自分の勝利より、マイネルグロンを勝たせることが一番です」。同期で互いに切磋琢磨(せっさたくま)してきた平沢騎手のラストランになることについては「勝たせないですよ。僕が勝ちます。勝って、あいつに『お疲れさま』って言ってやりたいんです」。その通りになりました。レース後、平沢騎手を囲んだ記念撮影ではファンからも温かい拍手と声が飛んでいました。

明日の競馬と28日の競馬で障害競走は残り2鞍。石神騎手を追う小牧加騎手が2勝を挙げることができるのか。最後まで注目です。

明日はクリスマスイヴの有馬記念。昨年は降雪による高速道路の通行止めもあって、中山競馬場への到着が大きく遅れた関西馬がいましたが、今年はどの馬もスムーズに競馬場へ到着したようです。素晴らしい天気、素晴らしい馬場で、素晴らしいレースになるように願いたいと思います。【木南友輔】