年の瀬に、名コンビから新星誕生だ。牝馬のレガレイラ(木村)が大外一気の差し切りで重賞初制覇をG1で飾った。

ホープフルSがG1に昇格した17年以降、牝馬の勝利は史上初。勝ちタイムは2分0秒2。新種牡馬のスワーヴリチャード産駒はG1初制覇。鞍上のクリストフ・ルメール騎手(44)はJRA・G1年間7勝目、同G1通算50勝に到達した。牡馬を倒した同馬は牡馬クラシック1冠目の皐月賞(G1、芝2000メートル、24年4月14日=中山)に参戦する可能性が高まった。

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一刀両断。レガレイラが男も女も、まとめてのみ込んだ。4角10番手で直線を向くと、残り250メートルでエンジン点火。大外から1頭、また1頭と追い抜く。最後の標的は内から抜けたシンエンペラー。ゴール前で一瞬馬体を寄せたが、勢いが一枚上だった。3/4馬身突き放し、ルメール騎手は首筋を2度ぽんぽんとなでた。「すぐにギアアップしていい反応でした。びっくりしました。G1でこの脚を使える馬は少ないです」と絶賛した。

幼さは伸びしろの裏返しだ。パドックでは冷静を保つも、馬場入りから徐々にヒートアップ。ゲート内でちゃかつき後手に回ったが、後方2番手で鞍上が慌てず御した。「プラン通りじゃないけど、ペースはちょうどよかった。すぐに冷静に走ってくれた」。3角から馬群を縫うように前進。全体の上がり時計を0秒9上回る、メンバー最速35秒0の末脚で切れた。

「ルメール騎手×木村厩舎」とくれば、スターホースの香りが漂う。同コンビで育んだイクイノックスは今年国内外G1を4勝。名実ともに世界一の称号を得た。多くの素質馬を託す木村師は「スタッフには前進気勢を消さない馬を作ろうと話していますが、ルメールさんや北村宏司さんはしっかり収めてくれるので、そこに向かって調教を積み重ねられる」と信頼を置く。冷静と情熱の間を巧みに行き来させる技術が、才能を開花させてきた。

2023年を最高の形で締めたが、次のステップはすぐにやってくる。牡馬14頭、牝馬1頭をなで切り、来春は牡馬クラシック参戦も視野に入る。2年ぶり6度目のJRAリーディングに花を添えた同騎手は「(牡馬、牝馬は)関係ないですね。一番大事なのは能力。伸びしろはあるし距離も大丈夫。能力があるし来年が楽しみ」と笑みをこぼした。可能性は無限大。一躍世代のトップに駆け上がったレガレイラが、牡牝の壁をぶった切る。【桑原幹久】

◆レガレイラ ▽父 スワーヴリチャード▽母 ロカ(ハービンジャー)▽牝2▽馬主 (有)サンデーレーシング▽調教師 木村哲也(美浦)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 3戦2勝▽総収得賞金 8277万9000円▽馬名の由来 ポルトガル中西部の都市シントラにある宮殿。