マイラーズC(G2、芝1600メートル、27日=京都、1着馬に安田記念優先出走権)に出走するホウオウリアリティ(牡7、井上)を熱く見守る人がいる。昨年に騎手を引退した藤井勘一郎氏(41)だ。同馬を管理する3月開業の井上智史調教師(43)とは旧知の仲で、現在は裏方として厩舎を支えている。スタッフの進言もあり訪れた同師の重賞初挑戦。藤井氏もその時を楽しみにする。
◇ ◇ ◇
馬のチャレンジを支える人のチャレンジがある。昨年2月に騎手を引退した藤井氏は井上厩舎のマネジャーとして、新たなキャリアをスタートさせた。22年4月の落馬事故で第4胸椎脱臼骨折の大けがを負った。2年近く懸命なリハビリを続けた中で、現役を引退。苦境に直面しても、ひたすらに前を向いた。
4月からえんじ色の厩舎服をまとい、車いすでトレセンに姿を見せる。新厩舎では主に情報共有の役割を担っている。「厩務員さんや乗った方のコメントをまとめて、情報共有のアプリにまとめています」。他にも、馬主へのサービスとして送っている馬の写真や動画の撮影も行っている。
「自分のやっていることが勝ちにつながらないと意味がない。何ができるかと考えることは尽きない。貢献していきたいですから」。ノートの取り方や文章の構成について記者に“逆取材”をすることもある。驚くべきハングリー精神だ。
井上師との交友が始まったのは00年。オーストラリアの競馬学校で同じ関西出身として意気投合した。シンガポールでも同じ厩舎に所属しており、ともにビーチで遊んだこともあった。「まだ彼が調教師試験を受けている時でしたが『開業したらお手伝いをしてよ』と声をかけていただいて。いろんな視点から競馬を見られるようになって、改めて馬の魅力も感じるようになった」と目尻を下げる。
旧知の間柄でも尊敬の思いが心にある。「厩舎の雰囲気も良くて、皆も意見を言い合える。スタッフへの気遣いにもたけていますね」。ホウオウリアリティのマイラーズC参戦もスタッフの進言があったという。
開業後の重賞初挑戦に厩舎のモチベーションも高まる。同馬は転厩初戦だった初マイルの前走・六甲Sで0秒2差の5着。「7歳で初めて1600メートルを使って、差のない決着。今回は少頭数だし、楽しみですね」。最終追い切りも無事に終え、態勢は十分。藤井氏もその時を心待ちにする。【下村琴葉】

