母の日に、父へ恩返しの1勝だ-。9番人気パンジャタワー(牡)が差しきり、G1初制覇を果たした。勝ち時計は1分31秒7。前日にエプソムCを勝った開業14年目の橋口慎介調教師(50)は、父弘次郎元師が06年にロジックで勝った一戦で見事に父子制覇を飾った。鞍上の松山弘平騎手(35)は4年ぶりのG1制覇。2着に3番人気マジックサンズ、3着に12番人気チェルビアットが食い込み、3連単は150万馬券と波乱になった。

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肩を落とした。ゴール直後の橋口師は悔しがった。「最後は負けたと思って、がっくりしていました」。数分後、パンジャタワーが1着と分かり表情が変わった。「信じられない気持ちです」と夢心地。松山騎手の鼓舞に応えて頭差残した。24時間前のエプソムC(セイウンハーデス)に続いての歓喜。「昨日と同じような競馬で、昨日みたいに乗ってくれないかなと思っていました」と幸せなひとときをかみしめた。

偉大な父がいる。ダンスインザダーク、ハーツクライ、ワンアンドオンリーなどを育てた弘次郎元師だ。自身は中学から競馬界を目指し、アイルランドの大学へ留学。調教助手から16年に定年引退した父の厩舎を引き継いだ。背中は追ったが「直接仕事の話をした記憶はあまりないですね」。でも、目標がある。父が調教師として最後の日、2人で乗った帰りの車を運転した。「助手席の父が本当にやり切った顔をしていて『もう本当に満足した。悔いは一切ない』と。僕もこういう気持ちで引退したいと目指しています」。

悔いは残さない-。今回は策を講じた。距離不安の残るパンジャタワーへコース調教を増やした。近3走の追い切りはCウッドで多くて2本だったが、この中間は3本。キャリアで初めて最終追いをウッドで行い、追い日以外も長めにコースで乗った。「父は坂路がメインでしたけど、あの馬の場合は逆のやり方。仕上がりには自信がありました」と考えを貫いた。中団外から先行馬をのみ込み、残り300メートルで先頭に。後続の追い上げをしのぎきり、工夫が実った。

池添兼厩舎の調教助手だった19年前、テレビで父がNHKマイルCを勝つ場面を見ていた。互いに立場が変わり、今は仕事の話が増えた。「父は馬券を買っているので、負けたらあーだこーだと言われます(苦笑い)」。5月11日は母の日。でも、今は父に向かって胸を張りたい。「勝ったぞ! と自慢します(笑い)」。これ以上ない親孝行だ。【桑原幹久】

◆パンジャタワー ▽父 タワーオブロンドン▽母 クラークスデール(ヴィクトワールピサ)▽牡3▽馬主 (株)Deep Creek▽調教師 橋口慎介(栗東)▽生産者 チャンピオンズファーム(北海道新ひだか町)▽戦績 5戦3勝▽総獲得賞金 1億8567万円▽主な勝ち鞍 24年京王杯2歳S(G2)▽馬名の由来 冠名+父名の一部