開業8年目で大きなチャンスが巡ってきた。いよいよ今週日曜に第92回日本ダービー(G1、芝2400メートル、6月1日=東京)が行われる。連載「いざ初ダービー」では、初めてダービーの大舞台に挑むホースマンを取り上げる。第1回は、皐月賞馬ミュージアムマイル(牡)を送り出す高柳大輔調教師(47)。“雲の上の存在”だったダービーでの勝利へ、挑戦者として自然体で歩を進める。
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まさか自分の管理馬が出走できるとは-。高柳大師にとってダービーは次元の違う“存在”だった。
「憧れるとかもないくらい、世界が違うものなのだと思っていた。雲の上の存在なんだと」
そんな競馬の祭典に皐月賞馬ミュージアムマイルを送り出す。初の大舞台に1冠目を制した王者として参戦するが、気負いはない。
「皐月賞上位組も強いし、別路線組も合わせて、さらにメンバーは強くなる。前走と同じように挑戦者として、どうやったら勝てるのかに集中するだけ。前回と同じ状態でいければ」
とにかく無事にゲートインすることを願う。数週間前から、師の表情にはダービー初出走の緊張とは別の緊張感があった。「前走の皐月賞もそうだったけど、パドックから返し馬に行き、ゲートに入ってスタートを切るまではめちゃくちゃ緊張する」。その背景には22年のオークスがある。
牝馬クラシック初出走のはずだった管理馬サウンドビバーチェが、ゲート裏の輪乗り時に放馬。顔部挫創のため競走除外となった。「当時は本当に悔しかったし、申し訳なかった。その経験があるし、どのレースでもとにかく無事にいってほしいという思いが強い」。未勝利戦でもダービーでも、何より願うのはそこだ。
調教師試験への挑戦も師の支えとなっている。「トレセンで働くまで、調教師も雲の上の存在だと思っていた。それが調教師の近くで仕事をするようになり、自分も頑張れば…と思うようになった。9年もかかったけど、受かった時はすごくうれしかったし、頑張れば手が届くんだなと思った」。頑張れば、ダービーにも手が届いていい。
「距離延長、初の東京など不安はあるけど(馬を)信じるしかない」
悔いのない調整を施し、無事の発走を願い、あとは愛馬を信じるだけ。高柳大師は自然体で東京競馬場に立つ。【藤本真育】

