最高の男泣きがあふれ出た-。2023年に生まれた7944頭の頂点を決めるレースは、ロブチェン(牡、杉山晴)が勝利した。勝ち時計2分22秒7。

ホープフルS、皐月賞に続き3つ目のG1タイトルを獲得。鞍上の松山弘平騎手(36)は11度目の挑戦でダービージョッキーの称号を手に入れた。秋は菊花賞(G1、芝3000メートル、10月25日=京都)で、史上9頭目の3冠馬誕生に期待がかかる。

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夢にまで見た、ダービージョッキーだ。大激戦を制し、2冠馬になったロブチェン。その背にまたがる松山騎手は、11度目の挑戦で騎手最大の栄誉をつかみ取った。レース直後「まさか松山弘平がダービージョッキーになれるなんて…」と目を閉じてかみしめ、口角を上げた。ウイニングランでは「僕はうれしいときに涙が出ないタイプなんですけど、自然にあふれてしまった」と普段流れない涙が出ることに、ダービーを制覇した実感が芽生えた。

相棒を信じた。レース前までメンコを装着した効果で、落ち着いて8枠17番へゲートイン。発馬を決めたものの外を回らされる形に。鞍上は「本当はもう一列前で競馬したいと思っていたが、リズムが大事と思って、馬の力を信じて」とじっとした。直線で馬はその分弾けた。先に抜け出した2着馬に一完歩ずつ差を詰め、ゴール前でグイッと前に出た。「差し切ってくれて素晴らしかった」とパートナーをたたえた。

勝因は日々の地味な特訓にある。担当の房野陽介助手は、自らを“大リーグボール養成ギプス”と評する。競馬で速く、最後まで一生懸命走れるように-。角馬場や乗り運動からハミ受けを工夫し、トモの動かし方を意識する。房野助手は「大谷翔平とか野茂英雄とか、生まれつきあのフォームで投げてたわけじゃない。すごい身体能力の高い選手に、走る技術を教える感覚。競馬で速く走れればいいから」と英才教育を施した。

追われる立場になってもやることは変えない。1冠目からの変化はジョッキーが誰よりも感じた。「皐月賞よりいいフットワークで走れた。自信を持ってレースに臨めた」と不安はなかった。1冠目では逃げて差し返し、2冠目では中団から運んで前を捉えて勝利。世代最強馬の自在性、接戦の強さは努力の賜物。コツコツ積み重ねた結晶が、細部に宿った。

2冠馬は進化の途中にいる。これで史上9頭目の3冠馬に王手をかけた。鞍上は「まだ緩さはあって、これからもう一、二段階上がってくる」と現状を分析。3冠目の菊花賞を見据えつつも、激闘を終えた直後でもあり「今日は暑かったですし、少し疲れはあると思うので休んで欲しい」とねぎらった。そして、「ロブチェンとまた大きなレースを勝てるように頑張りたい」。自身に最高の称号を与えてくれた相棒と、登る山道はまだ先がある。ロブチェンとダービージョッキー・松山弘平は、最高峰の頂を目指し続ける。【深田雄智】

◆ロブチェン ▽父 ワールドプレミア▽母 ソングライティング(ジャイアンツコーズウェイ)▽牡3▽馬主 フォレストレーシング▽調教師 杉山晴紀(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 5戦4勝▽総獲得賞金 6億4032万円▽主な勝ち鞍 25年ホープフルS(G1)、26年皐月賞(G1)▽馬名の由来 モンテネグロの山名