日本ダービー(G1、芝2400メートル、東京)が31日に迫った。3歳馬の頂点を決める大一番を前に、主催するJRAを監督する、鈴木憲和農林水産大臣(44)に話を聞いた。好きな競走馬、高校生時代から続く競馬愛、競馬ファンが買う馬券の果たす役割、立場上馬券を買うことができない歯がゆさなど、自身の言葉を紡いだ。Web用に一問一答でアップします【取材=高橋悟史】
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-大臣が思う競馬の魅力、日本ダービーの魅力を教えてください
鈴木大臣 3歳で限られたチャンスをものにする運がある馬。またがることのできるジョッキーの巡り合わせを感じるのが、一番の魅力じゃないですかね。僕はスペシャルウィークからですけど、やっぱり武豊さんが「自分をダービージョッキーにしてくれた馬」と語ってるのが印象的でしたね。10回目の挑戦だったんですよね。
-やはり思い出の1頭はスペシャルウィーク
鈴木大臣 ダービーの翌99年のジャパンCもすごく感動しました。凱旋門賞馬のモンジューがいて、それで日本の総大将スペシャルウィークが勝つわけですが、誇らしく思えました。知れば知るほどスペシャルウィークが特殊な馬だと分かって。お母さんがすぐに死んでしまって、乳母に育てられたし、人がすごく手をかけたから小さいころから人への信頼があった、とか。そういうストーリーを知ったこともありましたから。
-農林水産大臣は馬券は買えないのでしょうか。
鈴木大臣 競馬の公正中立のために買えません。競馬法第29条で定められています。JRAの職員さん、特定の職員は買えないです。細かく言うと、決裁権限がある、大臣、事務次官、局長、担当課の職員は買えないルールです。副大臣は公務中でなければ買っていいので、私も副大臣の時は買っていました。買ったら大体はやられますけどね。
-3月には国会での答弁で、競馬ファンから支持を集めました。
鈴木大臣 あの場は資料としてJRAのCMをプリントアウトしたものをもっていたんです。その時におかしいなって思ったんです。馬券は外れている人が多いのに、なんでみんなこんなに感動しているんだろう。自分に置き換えて考えてみたら、感動するんですよね。
-SNS上で、競馬ファンから支持を集めました。
鈴木大臣 競馬の楽しみ方っていうのは本当に人それぞれだと思います。馬券でプラスですっていう人は、理論上ほぼいないはず。競馬場に行って生で観戦して、あの雰囲気とか、馬の美しさとか、ジョッキーの頑張りを感じることができます。また表彰式の時に、厩務員さんが自分の育てた馬が、無事に走り切って勝ち上がってくれた時の喜びとかも、自分に置き換えてみるとひとしおですよ。お金が儲かる儲かんないとかいう話は、超えてるなっていうのはいつも感じます。
-ファンが買う馬券が日本に果たす役割について教えてください。馬券でやられた時のせめてもの免罪符として。
鈴木大臣 買っていただいた時点で畜産振興に充てさせていただいていますし、社会福祉分野でも活用しています。結果として、社会が良くなるということに繋がっています。食料安全保障などで大変な時代です。今回、農業構造転換集中対策として、集中的にいろいろな設備の更新とか新しい投資のための財源を特別に拠出していただくことしています。これは馬券でやられたからではなくて、馬券を買ってもらった時点で参加していただいていることになります。
-近年はフォーエバーヤングのように海外の大舞台で活躍する日本馬が多くいます。世界で戦う日本馬の姿をどのようにご覧になっていますか。
鈴木大臣 本当に誇らしいですよね。野球の世界で言えば、野茂さんから始まって、メジャーリーグで日本人があんなにMVP取るなんて想像できなかったと思うんです。でもそれが今当たり前のようになっています。サッカーも当然そうです。競馬でもフォーエバーヤングが頑張ってくれてますけど、シーザリオもアメリカンオークスを勝っている。競馬の場合、海外で勝負して、レースに使うってことになると、調教の拠点をずっと海外にということができないし、芝の質も違うし、雰囲気も当然違います。ブリーダーズCをテレビで見て思いましたけど。荒々しいっていうか、日本とはちょっと別の競馬。馬主さんもそうだし、調教師の矢作さんもそうですけど、覚悟のいることですよ。あとは、元気なうちに凱旋門賞を勝つのを見てみたいですよね。
-話が戻りますが、大臣になって不便なのは馬券が買えないことですか。
鈴木大臣 これは本当にストレス。それでも十分楽しんでいますけどね。去年東京競馬場のジャパンCに行かせてもらって、スペシャルウィークの時のJCを思い出しました。盛り上がり方、カランダガンの強さ、欧州で一番強い馬に来てもらって本当に強かった。JRAの誘致も成功しているわけですし、国際競走のステータスを維持する意味でもいろいろな馬に活躍してもらうことは大事です。
-欧米では競馬の地位低下が顕在化しています。日本の競馬が世界で果たす役割はありますか。
鈴木大臣 盛り上げてくださっているのはファンの皆さんのおかげです。あとは強い馬を生産してくれている牧場の皆さん。1歳の育成からすごくハイレベル。その努力が結果としてファンの皆さんに伝わっているのかな。
-今でも競馬はご覧になりますか
鈴木大臣 さすがに全レースは無理ですし、リアルタイムでというのは限られます。ただ移動中は見られるので見ています。土日の午後3時から午後4時はメインレースだから予定を入れないように、なんてのは言い過ぎですけど。
-馬券購入という一方で、ギャンブル依存症も重要な課題です。
鈴木大臣 そうです。多くはネットで馬券が買えます。自分の身を滅ぼしてとか、生活を犠牲にしてっていうのは本当にしちゃいけないこと。競馬に限らずですが、対策は政府としてしっかりやらなければならない部分です。
-バランスが難しいところです。
鈴木大臣 楽しんでいただく、というのが正しいのだと思います。あとは基本的にプラスにならないルールになってるってことを、スタートの時点で理解していただくことですかね。
-ザ・ロイヤルファミリーについては
鈴木大臣 本が売られてすぐに買って読みました。テレビドラマはまだちゃんと見られていないんですよね。普段競馬を見ない人が興味を持ってくれたらうれしいです。
-座右の銘で「現場主義」と「日本を耕す」と書いてもらいました。この言葉の意図は。
鈴木大臣 現場が大事っていうのは、当たり前の話で。論理上、正しくても現場に行かないと気づかないことはいっぱいあると思うんです。まあ結局現場って言っても現場は1つじゃなくて、地域によっても感覚も違うし、気候も違うし、農業をやる上では難しさも違うと思います。ちゃんと考えながら、自分で行ってみて、どう感じるかっていうのが一番大事。自分がその人の立場だったら、どういう政策だったら納得感があるかとか。同じことを言うにしても、説得力が全然違います。もちろんこれは見に行くだけじゃなくて、本当は自分でやってみた方が良くて、もっと言うと1日やるだけじゃ多分分からないので、もっとたくさんの期間、1年や数年でやってみることの方が大事ですけど、そこまではできません。農林水産省の職員の皆さんにもなるべく現場に行ってくださいと言っています。「現場はこうです」という説得のされ方をしたら、多分ノーと言えないんです。それを乗り越える何かがあるのであれば、それは大切なわけですし。
日本を耕すについては、土作りって大切です。先日牧場に行って芝や牧草地を見たのですが、管理することの努力はすごいこと。ここから強い競走馬が育つわけですし、スタートの部分なので土を耕すのは大切という意味です。
-現場を見すぎると判断が難しくならないか。
鈴木大臣 どこかで決めなくてはなりません。できるだけ一律ではなく、それも多様性が担保できた方がいい。北海道のことと沖縄のことで一緒のことはやれません。これ一本です、というのとちょっと分けます、という時で現場の受け止め方が違うと思っています。その姿勢が伝わるかどうかが大切だと思います。一番嫌なのは「現場のことを分かってくれていない」って言葉です。省内で僕より現場のことを分かっている人はいない、と思っています。私より分かっている人がいたら、その人の意見を聞きます。自分で動いて分かっていないと最後の判断をミスってしまう気がします。
-お時間を割いていただきありがとうございます。
(おわり)
◆鈴木憲和(すずき・のりかず)1982(昭57)年1月30日、東京都生まれ、山形県在住。東京大学卒業後、05年4月農林水産省入省。12年2月退職し、同年12月山形2区から衆議院議員初当選し現在6期目。23年9月に農林水産副大臣に就任、24年11月復興副大臣に就任、昨年10月から農林水産大臣。家族は夫人、2男。好きな馬はスペシャルウィーク。座右の銘は「現場主義」「日本を耕す」。

