日本ダービー(G1、芝2400メートル、東京)が31日に迫った。3歳馬の頂点を決める大一番を前に、主催するJRAを監督する、鈴木憲和農林水産大臣(44)に話を聞いた。好きな競走馬、高校生時代から続く競馬愛、競馬ファンが買う馬券の果たす役割、立場上馬券を買うことができない歯がゆさなど、自身の言葉を紡いだ。【取材=高橋悟史】
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鈴木大臣の競馬の記憶は98年にさかのぼる。スペシャルウィーク、セイウンスカイ、キングヘイロー。当時、高校生だったが記憶に深く刻まれた。「スペシャルウィークが好きでした。お母さん(キャンペンガール)が、産んだ後にすぐに亡くなってしまって。他の馬に育てられてこともあって、人に育てられた側面も多かったから人懐っこいとか、武豊さんが10回目の挑戦でダービージョッキーになれたとか、そういうストーリーを聞いたので好きでしたね」。
自宅には馬主さんから譲り受けたジャパンカップ優勝時のスペシャルウィークの蹄鉄が大切に保管されているという。
ダービーの重みは、武豊騎手がスペシャルに対して「自分をダービージョッキーにしてくれた馬」という主体が馬になる言葉からも感じている。「1度しか出られないレースで、限られたチャンスをものにする運。それにまたがることが出来るジョッキー。その巡り合わせを感じられることがダービーの魅力だと思います」。
JRAの監督官庁のトップだが、思わぬ側面での”ストレス”はあるという。「馬券が買えないことです。競馬の公正中立を期すために競馬法第29条で定められている関係者、当然JRA職員は買えません。また、いろいろな場所に立ち入ることができるので、政府職員もダメです。農水省の職員全員がダメではありません。細かく言うと決裁権限のある大臣、事務次官、局長、担当課の職員は買えないルール。でも副大臣は公務中でなければ買えます。だから副大臣時代は買っていました。今は財布がいたまないのである種いいことなんですけど」。
今年3月の参院農林水産委員会で、射幸心をあおるようなCMについても質問があがり、答弁した姿にSNS上では賞賛の声が上がった。「競馬の楽しみ方は人それぞれです。もちろん身を滅ぼすほど買ってしまうのは、競馬に限らずだめです」と前置きした上で「『馬券でプラスです』なんて人は理論上ほぼいないはずです。じゃあなんで競馬場に行くのか。馬、ジョッキーの頑張り、育てた厩務員さんの喜びとか、自分に置き換えたらひとしおです。馬券で儲かる儲からないという話は、超えてるなとはいつも思いますね」。大臣自身がスペシャルウィークのストーリーに感動したように、人生を重ね合わせるファンの心理は分かっている。
先日、愛媛県で行われた植樹祭に出席した際、競馬がコミュニケーションツールとなった。県庁の女性職員に大臣が「お疲れさまです」と声をかけると、立ち止まって動かなかった。少しの間を置いて「私も大臣と一緒で競馬大好きなんです」と言われた。「それで結構盛り上がりましたよ。その方は馬券は当たったのかな? 僕は買えないんだけど」と笑い「そういうのもいいですよね」と振り返った。
日本馬の海外遠征は当然になり、昨年はBCクラシックをフォーエバーヤングが制する快挙もあった。「野球の世界でいえば、MLBで日本人がMVPなんて想像できなかったことが、当たり前のようになっています。フォーエバーヤングを筆頭に、シーザリオだってアメリカンオークスを勝った。競馬の場合は調教の拠点をずっと海外にということができないし、競馬の質も違う。あとは元気なうちに凱旋門賞を勝つところを見てみたいですね」と期待を寄せた。
最後に座右の銘について聞いた。「現場主義はもう当たり前の話で、理論上正しくても現場に行かないと気づかないことはいっぱいあります。本当は自分でやってみたほうがよくて、1日じゃ分からない。1年とか数年やってみるほうがいいけどそれはできない。『現場はこうです』と言われたらノーと言えない」。週末ごとに各地を訪れて現場と接している。「日本を耕すについては、土って本当に大事。先日、北海道のノーザンファームや日高地方を訪問させてもらったのですが、芝や牧草地の管理が素晴らしくてあれを続けられるのは、土作りも含めた努力がすごい。だから大切だと思うんです」と土台となる部分の重要さを感じている。
多忙で競馬場に行く機会はほぼないという。ただ「土日の移動中は配信で競馬は見てますよ」と研究は欠かさない。「メインレースがある午後3時から午後4時は、打ち合わせもできるだけ入れないようにして」と言うのは冗談と本音が半々。31日の午後3時40分に発走する日本ダービーは、プレゼンターとして、東京競馬場での生観戦に臨む。
◆鈴木憲和(すずき・のりかず)1982(昭57)年1月30日、東京都生まれ、山形県在住。東京大学卒業後、05年4月農林水産省入省。12年2月退職し、同年12月山形2区から衆議院議員初当選し現在6期目。23年9月に農林水産副大臣に就任、24年11月復興副大臣に就任、昨年10月から農林水産大臣。家族は夫人、2男。好きな馬はスペシャルウィーク。座右の銘は「現場主義」「日本を耕す」。
<取材後記>
SNSやニュースなどで皆さんが抱くイメージ通りの大臣でした。国会会期中の多忙な中、隙間をぬうように時間をとって頂きました。インタビューが始まる前に言っていた「こんなにうれしい取材は初めてかも」という通り、本当に競馬が好きなことが分かりました。昨年のジャパンCは表彰式のために東京競馬場へ。関係者の方も言っていましたが「大臣は予定の入り時間よりかなり早く到着されていました」。ついつい足が競馬場に向かってしまったのでしょう。農水大臣という立場で馬券は買えないとのことなので、買える立場になったら是非ニッカンで予想もお願いします!【高橋悟史】

