JRA初の還暦ジョッキーがターフを去る。現役最年長60歳の柴田善臣騎手が引退を決断した。15日、JRAが発表した。本人から騎手免許の取り消し申請があり、18日付けで騎手免許を取り消す。
16日に会見を行う予定で、今後はJRAのアドバイザーに就任する。競馬学校騎手課程の1期生として1985年にデビュー。通算2341勝、JRA重賞96勝(うちG1・9勝)を積み上げた。42年目の今年は3勝を挙げるも4月に右肩を負傷。懸命なリハビリを重ねたが復帰に至らず、目標とした還暦での騎乗はかなわなかった。
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「はい、柴田です」。電話口から聞こえる声は、いつも穏やかだ。記者は21年秋に競馬担当へ配属されたが、当時はコロナ禍の終盤。柴田善騎手の連載取材は毎週金曜朝の電話が主。面と向かって話す機会は少なかった。それでも“ニッカンの記者”というだけで何でも話してくれる。多彩な趣味、愛犬、他競技や事件・事故の時事ネタなど、競馬以外の話もすんなりと。“ご意見番”のような立ち位置で連載ネタを提供していただき、感謝しかありません。
そんな仏のような柴田善騎手にふと聞いたことがある。60歳を超えるベテラン記者から以前「善臣は昔、怖かったんだぞ」と聞いたことがあった。直接本人に「昔は怖かったって本当ですか?」とぶつけると「若い頃は減量がきつくてぴりぴりしてましたよ。それが顔に出る方だから周りが寄ってこなかった。若い記者さんは怖がってたかもしれないね」と、いつもよりゆっくりとした返事。その声には後悔がにじんだように思えた。
柴田善騎手が馬上で最も大切にすることは「馬の気持ちに寄り添うこと」。乗り難しい馬も「今の気分を感じてあげますね。いつも一生懸命じゃない馬は『最後だけは頑張ってね』としまいを生かしてあげたり。答えがないからこそ面白いよね」と“会話”を楽しんでいた。話を戻せば、晩年のジョッキーは弊紙記者と毎週金曜朝の会話を、楽しんでいたのかもしれない。「記者さんの先にはファンがいるわけですし、ファンのおかげで僕らはご飯が食べられている。どんな質問にも一生懸命答えることは当然ですよ」。立場は変わっても、いつもの穏やかな声を聞き続けたい。【中央競馬担当=桑原幹久】

