1号店に飾られていたキットソンで買い物を楽しむセレブたちの写真。セレブとのコラボレーションも多く、女の子たちには憧れのお店でした(2012年撮影)
1号店に飾られていたキットソンで買い物を楽しむセレブたちの写真。セレブとのコラボレーションも多く、女の子たちには憧れのお店でした(2012年撮影)

スター御用達ブランド

 セレブ御用達ブランドとして2009年に日本にも進出し、一世を風靡したLA発のセレクトショップ「Kitoson(キットソン)」を覚えていますか? 2000年にビバリーヒルズのセレブ御用達ショッピング街ロバートソンに1号店をオープンさせると、パリス・ヒルトンやブリトニー・スピアーズ、マイリ―・サイラスらセレブが連日のように訪れ、パパラッチの撮影場所となるほど人気を博し、LAのセレブファッションを代表するショップとして世界中の女の子たちを虜にしました。

全米17店舗すべて閉鎖

 それから15年。セレブファッションの一時代を築いたキットソンが、カリフォルニアを中心とする全米の17店舗すべてを閉鎖することを発表。事実上の倒産で、LAのセレブブランドの終焉に複雑な想いを感じています。日本の店舗はすでに閉鎖されているそうですが、日本進出の際には大行列ができたとニュースになったほど若い女の子たちに大人気だったキットソンに、一体何があったのでしょう。

LAの観光スポットにも

 数年前までキットソンはLAを訪れる女の子たちの間では人気の観光スポットでした。日本でも人気が高かったので、私も過去に何度か旅行ガイドブックに寄稿するため取材をさせてもらったことがあります。当時はLAカジュアルブランドを中心にセレブに人気のブランドがずらりと並び、常連のセレブたちが店内で買い物を楽しむ写真が飾られるなど、LAセレブファッションの火付け役としてとにかくすごい人気でした。

ロバートソンにあるキットソンの1号店。以前は店の前でパパラッチが張り込みを行うほどセレブに大人気でした
ロバートソンにあるキットソンの1号店。以前は店の前でパパラッチが張り込みを行うほどセレブに大人気でした

 クリスマスの時期などは、入店制限がかかるほどでした。セレブとのコラボ商品や日用品、コスメ、子供服、メンズなど幅広いランナップの商品をそろえるだけでなく、オリジナル商品も販売。中でもKitsonのロゴ入りバッグは大ヒットし、日本の女の子たちもこぞってバッグを買い求めていました。パリスも愛用するスウェットが上下合わせて300ドルもするなど、「たかがスウェットに誰がそんなお金払うのだろう?」と、その価格設定に驚いたものですが、そんな高級カジュアルファッションブランドの商品が当時は飛ぶように売れていたのです。

大衆化でブランド価値低下?

 好調な売り上げを背景に2008年にロサンゼルス郊外に初の支店をオープンすると、その後はネバダやオレゴン州など州外にも進出し、次々と店舗を増やしていきました。短期間にあまりの勢いで店舗数を増やしたことで、セレブ御用達ブランドとしての価値を失い、大衆化してしまったことが敗因ではないかと個人的には思っています。

 セレブが買い物を楽しむロバートソンまでわざわざ足を運び、運がよければ憧れのセレブに会えるかもしれないと言うドキドキ感。そして、そこに行かなければ買えないからこそ価値があったキットソンが、空港でも買えるようになってしまっては、飽きられるのも早かったのでしょう。ロサンゼルス・タイムズ紙によると、2013年に投資会社から1500万ドルの借り入れを行い、今夏にも倒産を避けるために新たな投資を受けるなど、ここ数年は経営が火の車だったようです。近ごろはキットソンがメディアで話題になることもほとんどなく、訪れるセレブも激減。ロサンゼルス空港店もオープン後すぐに閉店するなど苦しい経営状態が続いていたようです。

ロバートソン通りも閑散空き店舗

 キットソンの人気低迷に合わせるかのように、一時は高級車がずらりと並び、いつも大勢の人で賑わっていたロバートソン通りも、最近は空き店舗が目立ち、閑散とした雰囲気になっています。現在、キットソン全店で閉店セールを開催中とのことなので、この時期にLAにいる方はお得にセレブブランドが買えます。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。写真も)