シェア自転車が定着してきたロサンゼルス(LA)の街角で最近、黒い電動キックスクーターを良く見かけるようになりました。街のあちらこちらの路上に無造作に放置されるように置かれているので、否が応でも目に留まるこれ、Bird(バード)と言う名のシェアスクーターです。

住宅街に停められた電動スクーターのバード
住宅街に停められた電動スクーターのバード

ライドシェアサービス「ウーバー」の元重役が昨年9月に設立したもので、気軽に街を移動する新たな交通手段として注目されており、乗り捨て自由のシェアサービとしてバードは今、LAで大流行。追随するように同様のサービスを提供する会社も複数出ており、顧客の争奪戦が繰り広げられています。

駅前にはこんな風に数台のバードが並んでいます
駅前にはこんな風に数台のバードが並んでいます

スクーターと言うと日本では原付バイクを想像する人も多いと思いますが、こちらでは足で漕いで乗る二輪とハンドルがついたもので、子供から大人まで利用できる乗り物です。バードを利用するには専用アプリをダウンロードし、携帯電話のGPS機能を使って近くにある利用可能なバードを地図上で探すだけ。ハンドルの左がブレーキで、右がアクセル。数回キックして走り出すと後はアクセルでどんどんと前に進んでいきます。難しい操作は必要ないので誰でもすぐに利用できますが、利用は18歳以上限定。運転免許所の所持が義務付けられており、子供が利用することはできません。最大時速は15マイル(約24キロ)で、普通の自転車よりも早いスピードで移動できます。

お店の駐車場や自宅や職場の前など、乗り終わったバードはその場で邪魔にならないように停車させるだけ
お店の駐車場や自宅や職場の前など、乗り終わったバードはその場で邪魔にならないように停車させるだけ

バードの利点は、利用料金が基本料金の1ドルに加えて1マイル(約1.6キロ)ごとに15セントと格安なこと。さらにシェア自転車のように駐輪所がないので好きな所に乗り捨てができることです。例えば、最寄りの駅でバードを拾って自宅まで乗って帰り、家に着いたら自宅の目の前の路上に放置するだけという便利さ。バードについているQRコードをスキャンするだけですぐに利用ができ、使い終わったらアプリからロックすれば利用した分の料金が精算されるシンプルな仕組みが特徴です。

このQRコードをアプリで読み取るとロックが解除されて利用が可能に
このQRコードをアプリで読み取るとロックが解除されて利用が可能に

使用途中で充電切れになったらという心配も無用で、アプリでバッテリーの充電状況を事前に確認できるという優れものです。「便利でエコ。交通渋滞を緩和し、都市生活を快適にするもの」と共同創業者の一人は語っている通り、駅から自宅や職場までの歩くにはちょっと遠いなと感じる微妙な距離を移動する手段として最適だと言われています。1回の充電で15マイル走行可能だと言い、夜間にGPSを頼りに放置されたバードを探して回収して充電する専用の従業員がいます。今年2月の時点で4万人を超えるユーザーがおり、数千台のバードがLA近郊で使用されていると言われ、現在は全米にもシェアが広がっていますが、スタート当初は必要な事業運営許可を得ていないなどとしてサンタモニカなど一部の市から訴えられるなどのトラブルもありました。現在はサンタモニカではバードと他の同様のサービスを提供する3社の利用が認められているものの、各社とも台数が制限されています。

「世界最悪の渋滞都市」とも言われるLAで、環境にやさしく、渋滞を緩和させる次世代の乗り物として電動スクーターが街を占拠する日が近いのでは? とも言われていますが、便利な一方で利用者のマナーが問題にもなっています。

利用は運転免許証を所持する18歳以上。通常の交通ルールを守っての走行が義務付けられています
利用は運転免許証を所持する18歳以上。通常の交通ルールを守っての走行が義務付けられています

バードはバス停を探したり、バスを待ったりする必要がないので観光客にもとっても便利な乗り物なため、サンタモニカなどの観光地では争奪戦も起きており、台数不足が叫ばれる一方で、住宅地では大量のバードが道に乗り捨てられていたりする事態も起きています。乗り捨て自由のために歩道に放置されるスクーターの数が増えると歩行者の通行の妨げになり、事故の原因にもなりかねません。

右側の男性はヘルメットを着用していますが、左側の女性はノーヘルメット。利用者のマナーが問われています
右側の男性はヘルメットを着用していますが、左側の女性はノーヘルメット。利用者のマナーが問われています

また、本来は利用が禁止されている子供が利用するケースも目立ち始めている他、無謀な乗り方をする若者が増えるなどして、安全面を危惧する声も出ています。また、バードは利用者にヘルメット着用を推奨していますが、実際にはヘルメットをしている人はほとんど見かけず、今後は利用者のマナー問題をどうクリアしていくかが課題となりそうです(米ロサンゼルスから千歳香奈子。日刊スポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)