アップルのサンタモニカ店は開放的なガラス張りの建物で多くの人が訪れる人気店
アップルのサンタモニカ店は開放的なガラス張りの建物で多くの人が訪れる人気店

米国が中国からの輸入品に対する関税を現在の10%から最大25%に引き上げると表明してから2週間強。昨年1月以降発動してきた関税措置も、今回の第4弾により中国からのほぼ全ての輸入品が関税の対象となります。13日に発表された追加関税対象リストには、アップル社のiPhoneなどスマートフォンやノートパソコン、スポーツ用品や玩具、衣類、靴など履物も含まれており、生活必需品がおよそ4割を占めることから経済への影響が懸念されています。そんな中、ナイキやアディダス、スケッチャーズなど173ものシューズやスポーツ用品のメーカーが、ドナルド・トランプ大統領に対して対中関税の引き上げ中止を求める公開書簡を発表しました。

フットロッカーの店内にはナイキやアディダス、プーマなど多くのスニーカーが並んでいますが、今後は商品の値上げで客離れが進む可能性も
フットロッカーの店内にはナイキやアディダス、プーマなど多くのスニーカーが並んでいますが、今後は商品の値上げで客離れが進む可能性も
アメリカを代表するフットウェアブランド・ナイキのサンタモニカ店は観光客にも人気ですが、今後の値上げは売り上げに影響を及ぼす可能性も
アメリカを代表するフットウェアブランド・ナイキのサンタモニカ店は観光客にも人気ですが、今後の値上げは売り上げに影響を及ぼす可能性も

スニーカーを中心とするフットウエアはおよそ4分の3が中国から輸入しているのが現状で、「米国の消費者や企業、経済に破滅的な影響を与える」とし、スニーカーを含めるあらゆる種類の靴に関税措置を行った政府を批判しています。公開書簡には他にもプーマやリーボック、アグ、スニーカー小売り大手のフットロッカーなども名を連ねており、関税によるコスト増は商品の値上げとして直接消費者に影響すると訴えています。関税引き上げによる消費者の負担は年間70億ドルに達するとの試算も発表されており、商品の値上げに伴う消費者負担増だけでなく、今後は多くの店舗が閉店に追い込まれる可能性も出ています。

すでに米国内で大量の店舗閉鎖を発表しているギャップも関税でさらなる苦戦が予想されています
すでに米国内で大量の店舗閉鎖を発表しているギャップも関税でさらなる苦戦が予想されています
ここ数年で100店舗以上を閉鎖しているゲスも今後さらに店舗数が減るかもしれません
ここ数年で100店舗以上を閉鎖しているゲスも今後さらに店舗数が減るかもしれません

影響を受けるのはフットウエアだけではありません。Tシャツやタンクトップなどロサンゼルス(LA)の人たちにもっとも身近なカジュアルファッションの多くも中国から輸入されているため、GAP(ギャップ)やGUESS(ゲス)、高級品を除いてポロシャツなど多くの商品を中国で生産しているラフル・ローレンなど米国を代表するブランドも打撃を受ける可能性が指摘されています。さらに下着も大半が中国で製造されているため、スーパーモデルたちによる華やかなファッションショーが話題になるビクトリアズ・シークレットの売り上げも低迷すると予想されています。同ブランドはここ数年、上海で初のファッションショーを開催するなど精力的に中国進出をしてきましたが、中国が報復関税としてアメリカからの輸入品の関税を最大25%引き上げるとする中、中国市場での失速も懸念され、株価も下落。関税によって大きな被害を受けるであろうブランドの筆頭に名前が挙がっています。

女性に人気の下着ブランド、ビクトリアズ・シークレットも関税による打撃が予想されるブランドの1つ
女性に人気の下着ブランド、ビクトリアズ・シークレットも関税による打撃が予想されるブランドの1つ

トランプ大統領は「米国内で生産すれば関税はかからないし、中国ではない国から買うこともできる」とツイッターで反論していますが、アパレル業界では脱中国の動きも活発になっており、サンフランシスコ発のファストファッションブランドのオールド・ネイビーなどはすでにインドネシアやカンボジア、ベトナムやニカラグアなどに生産拠点を移しており、商品価格の現状維持に努めています。しかし、サングラスや帽子、スカーフといった品も当然ながら中国で製造されているものが多く、アメリカ人の頭のてっぺんからつま先まで全てにおいて中国製品が蔓延している今、貿易戦争は一般消費者のお財布事情に大きく影響を与えることは避けられそうにありません。特にインフレが続くLAでは、生活用品の更なる値上げは多くの人の生活を直撃することになりそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)